「尾上右近さんは松也さんと深い信頼関係が…」歌舞伎『刀剣乱舞』で尾上松也と脚本家が“刀剣男士”を作り上げるまで
2023年に新橋演舞場で上演された新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』。大人気ゲーム『刀剣乱舞ONLINE』の初の歌舞伎舞台化作品として、大変な評判となりました。上演が終わってからもその人気は続き、2024年にはシネマ歌舞伎として上映。さらに京都南座にて「衣裳展」も実施された本作品が、待望のBlu-ray&DVD化! 【画像】撮影中、まったくの偶然で尾上右近さんにお目にかかりました! 脚本を担当した松岡亮さんに前編では刀剣乱舞歌舞伎ができるまで、その反響について伺いました。後篇では、脚本についてもっと伺います。(全2回の後篇。)
「ニン」に合わせて作った脚本
――前編の最後、公式図録にシナリオを全て収録したというお話が出ましたが、今作は三日月宗近を中心に据えた物語であり、足利義輝をメインに扱った作品でした。 松岡:ニトロプラスさん、尾上松也さんからは、世界観が揺らがなければどんな脚本でも大丈夫と言われていました。これは書く側からすると力量を問われるということでもあります。同時に、歌舞伎の台本は、演じる俳優さんの「ニン」(持ち味)を生かして、それぞれの役柄を書くことが大事です。句会みたいなものですよね、お題をいただいてあとは自分で書くという……。 実は最初に考えていたプロットは江戸時代の物語でした。ですが、熟慮を重ねられた松也さんから、別のプロットを考えて欲しいというご提案があり、松也さん、菊之丞さん、プロデューサー陣と緊急ミーティングを行い、足利義輝が三日月宗近の最初の持ち主という説もあることから、いわゆる永禄の変をモチーフにすることにしました。 ――脚本を書く際に、ゲームはプレイされましたか? 松岡:プロデューサーから最初に、歌舞伎ならではの刀剣乱舞とするために、ゲームはもとより、刀剣乱舞の舞台や映像に触れることなく、まっさらな状態で脚本を書いてほしいと言われまして、ニトロプラスさんからいただいた資料のみで執筆しました。公演終了後にプロデューサーの許しを得て、『刀剣乱舞無双』をプレイして遊びました。公演の準備を進める中で、出演者の皆さん始め、スタッフさんにも審神者になる人が続出していきましたね。 ――ニンと言えば、登場する六振りが発表されたとき同田貫正国が大きな話題となりました。また、尾上右近さんが二役で足利義輝を演じられています。