「尾上右近さんは松也さんと深い信頼関係が…」歌舞伎『刀剣乱舞』で尾上松也と脚本家が“刀剣男士”を作り上げるまで
古典歌舞伎への入り口としても楽しめる作品に
――紅梅姫は歌舞伎ではおなじみの「赤姫」と呼ばれる拵えであったり、冒頭の六振りが集合するシーンでは、白浪五人男を彷彿とさせたり、松永弾正と妻の柵・久直の親子愛が描かれたり、歌舞伎のエッセンスを凝縮した、入門編のような側面もあると思いました。 松岡:松也さんや私たちには、古典歌舞伎の魅力をもっと知ってほしいという思いがあります。でもいきなり古典歌舞伎の通し狂言を見てくださいというのも、ハードルが高いですよね。作品そのものを楽しんでいただいた上で、歌舞伎に興味が湧いて、ほかの作品を見ていただいくための一助になればという気持ちも込めています。 ――そういう意味では脚本に竹本の「語り」が書かれているのは非常に参考になりますね。これは脚本家さんが書かれるんですか? ミュージカルだと作詞の方は別にいますよね。 松岡:我々の世界だと、脚本家が書きますね。歌舞伎は現代劇に比べて、どうしても理解するのが大変な側面があります。今回はイヤホンガイドや図録といった、サポートグッズがありますので、その力を借りていただければと思います。 ――Blu-ray/DVDにイヤホンガイド(作品解説)も収録されているのはありがたいですね! サウンドトラックも封入特典とのことですが。 松岡:サントラは、公演中から出してくださいというリクエストがとても多かったです。今回は前篇でお話しした図録もそうですが、本当に、ファンの皆さんのお声で実現したことがたくさんあります。音楽の中井智弥さんが作ってくださった素晴らしい音楽も併せて楽しんでいただけたら嬉しいです。 ――歌舞伎ファンも、刀剣乱舞ファンも、新たな世界に連れて行ってくれる作品ですね。最後に一言お願いいたします。 松岡:この作品は本当に、幸せな、恵まれた作品だと思います。松也さんを始め、出演俳優の皆さん、スタッフの皆さんと携わった多くの人々にも大変な熱意がありましたし、ファンの方も後押ししてくださった。私自身、参加できて幸運でした。Blu-ray/DVD、図録を通じて、ご自宅で刀剣乱舞の世界に浸っていただけたらと思います。今回観られなかったという歌舞伎ファンの方にも刀剣乱舞の世界に触れてほしいですし、刀剣乱舞ファンの方にも、「歌舞伎本丸」の魅力が届くことを願っています。願わくば、歌舞伎の良さを、この作品を通じてわかってもらえたら。これは、座組一丸の願いですね。 またご承知のとおり、先日、第二弾の公演について発表され、SNSでも大変な反響があり嬉しく思いました。前回同様に、松也さん、菊之丞さんとご一緒できる喜びと共に、新たな物語を紡ぐプレッシャーをひしひしと感じています。ことに2025年の公演は、100周年を迎える東京新橋演舞場に始まり、福岡博多座、京都南座と三都市を巡演する大きな公演です。前作以上により多くのお客様にご満足いただける作品となるよう、鋭意努力したいと思っています。 アクリルスタンドとポスターの横で行われたインタビュー。刀剣乱舞、そして歌舞伎への愛をたっぷり伺えました。実は聞き手のライターは歌舞伎鑑賞歴6年、アニメ・漫画好き。拝見して初心者の方にもわかりやすく、歌舞伎ファンは「見立て」のように楽しめる作品だと思いました。 何より、お客様に、ファンの方に楽しんでもらいたいという思いが伝わる『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』のBlu-ray/DVD、そして公式図録。ぜひ、ご自宅でお楽しみください!
宇野なおみ