「尾上右近さんは松也さんと深い信頼関係が…」歌舞伎『刀剣乱舞』で尾上松也と脚本家が“刀剣男士”を作り上げるまで
歌舞伎版刀剣乱舞だからこそできた挑戦
松岡:同田貫正国は中村鷹之資さんが演じてくださいました。非常に「ニン」に合っていたと思います。SNSが「同田貫正国一色!」と出演者の皆さんの間でも話題になっていました。尾上右近さんは松也さんと深い信頼関係で結ばれていて、三日月宗近と足利義輝の物語にすると作品の方向性が決定した段階で、松也さんは右近さんに義輝を演じて欲しいと仰っていました。そのおふたりの関係性は、右近さんが行ったあるサプライズからもわかると思います。何が行われたのかは、Blu-ray/DVDの特典映像でご覧になってください。 もうひと役の小狐丸も、右近さんのニンを考え、松也さんが決められたものです。今回は小狐丸と義輝の二役ということもあり、拵え替え、つまり着替えが多く、お忙しかったと思います(笑)。 ――脚本にも小狐丸が「我らはことさら忙しいのだ」というセリフがありましたね(笑)。中村莟玉さんも、義輝の妹・紅梅姫と髭切の二役を演じておいでです。この紅梅姫は、三日月宗近に思いを寄せる場面がありましたね。 松岡:刀剣の付喪神である三日月宗近に、恋愛めいた場面を描くことは挑戦でもありましたが、誰も見たことがない三日月宗近の姿が描けるかなと思いました。女優さんではなく、女方さんが演じるからこそ描けるものもあるかなと。もちろん、結ばれず、姫の片思いに終わります。歌舞伎の美しさと女方芸を感じられる場面だと思います。
歌舞伎の定番悪役をあえて悪役として描かずに
――松永弾正と言えば、歌舞伎では「国崩し」と呼ばれる大悪人である、松永大膳久秀のモデルとして有名です。ところが今回は人間国宝・中村梅玉さんが演じられ、「白塗り」の弾正、悪役にしなかったという点が従来作品と大きく違うところだと思いました。 松岡:梅玉さんに演じていただくにあたって、悪役で描くこともできましたが、あえて、清廉な、凛とした品のある役柄にしてみたら広がりが出るかと思いました。そういった人が将軍暗殺という大罪を決意するまでを描きたかった。梅玉さんが丁寧に演じてくださって……Blu-ray/DVDの特典に収録されている千穐楽のカーテンコールでの松也さんと梅玉さんの姿はぜひ見てほしいです。