「セモー」のデザイナー上山浩征とプロスケーター荒木塁が目指した ファッションとカルチャーの境界線を超える服づくり
――上山さんから見た荒木さんの作品の魅力とは?
上山:荒木さんの写真の良さはスケーターの視点から街が切り取られていること。「TEST PRINT」は、荒木さんが街を眺める目線や景色を偶発的に収めたフィルムのテストプリントをコラージュしたもので、唯一性と作品としての美しさを兼ね備えています。
服を作る際、「これで生地を作りたい」と感じるアート作品に出会うと、コラボレーションのイメージが湧いてきます。アート作品と一緒に、美しいもの、示唆に富んだものを作りたいと思うんです。「TEST PRINT」の場合は純粋に大きいサイズで見たいという気持ちもありました。
荒木塁(以下、荒木):普段は自宅の暗室でプリントしているので、大きなプリントはできないんです。
上山:生地が完成すると裁断し、縫製するのですが、その工程で荒木さんのコラージュ作品が、作品に直接関わっていない服飾専門の職人達によって、さらにコラージュされていく。そして新しいものに生まれ変わっていく。そこは一番面白いと思えたポイントです。
――「TEST PRINT」シリーズのモンタージュ作品は即興や偶然性の要素を強く感じます。このシリーズをはじめ、作品の制作背景についてお聞かせください。
荒木:確かに「TEST PRINT」は「これを作ろう」と思って取り組んだ作品ではなく、いろいろとトライした結果、偶然生まれた作品です。
自宅の暗室でのテストプリント(色味や明るさを確認するための使われないプリント)が綺麗だったので、それが何になるか分からないまま、捨てずに保管していました。ある時、海外の友達のブランドからスケートボードを作りたいという依頼があり、デザインを考えていた時に、ふとテストプリントの切れ端を集めて並べたら、いい感じになったんです。このテストプリントのコラージュでスケートボードを作ったのが「TEST PRINT」の始まりです。
「TEST PRINT」は視覚的な美しさがポイントで、今回の作品はニューヨークで撮った写真のみでコラージュしています。日本で撮影した写真だけを使用したものや、さまざまなロケーションの写真を使ったものもあります。使用する写真や並べ方は試行錯誤していて、今も実験中です。