『ロマンシング サガ2』皇帝は王を従えられる権力を持つ―ローマ皇帝の出現と帝国覇権の置き土産【ゲームで世界を観る#89】
『ロマンシング サガ2』は数あるゲームの中でも珍しい、主人公が歴代皇帝として次々入れ替わるユニークなシステムを採っています。物語は一人の英雄の一代記ではなく、一千年の時を超えて「継承」される想いが紡ぐ大叙事詩。命と引き換えに見切った技を次代に託す体験は、他のゲームでもなかなかお目にかかれないでしょう。 【画像全6枚】
そもそも「皇帝」とはどのような立場の人間なのでしょうか。地域や時代によって地位や役割は異なりますが、大まかには複数の国家民族を支配する権力を持つもの、つまり「王」よりも立場が上の存在に当たります。カンバーランドの王がいきなり主人公に「皇帝陛下」とへりくだるのでよく分かりますね。漢字で書く「皇帝」の称号は秦の始皇帝が最初に用い、世界史で「Emperor」の訳語として使っていますが、今回は欧州の皇帝についてフォーカスします。
欧州で「皇帝」の起源となったのは、他でもないガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)です。彼自身の「カエサル」もまた、皇帝を表す称号としてドイツやロシアに言葉を残しています。ローマは建国時はロムルスに連なる王政でしたが、5代目にはエトルリア人が王位に就き、7代目に追放されて共和制に移行します。共和制では民会、執政官、元老院と権力を分散させていましたが、例外として戦時などの非常事態においては、強力な権限を有する「独裁官」を選出する仕組みがありました。帝政に至る権力を持つために、これをカエサルは利用したのです。
カエサルは派閥対立で政変が続く共和制末期の中で権力を握り、ポンペイウス、クラッススと共に三頭政治を行っていました。しかしクラッススの死後に元老院、ポンペイウスと対立、ガリア戦争に用いた武力を用いてローマに帰還すると、政敵を排除して唯一の権力者の座に納まりました。民衆の支持を背景に一旦廃れていた独裁官に就くと、任期を10年に延長し、ついには終身独裁官に就任します。軍事力、政治力、民衆の支持、全てを一人の手に掌握した強大な最高権力、これを後継者として受け継いだアウグストゥスが初代ローマ皇帝として君臨するのです。以降、欧州で皇帝を名乗ることはカエサルの後継という意味を多分に含みます。
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