『ロマンシング サガ2』皇帝は王を従えられる権力を持つ―ローマ皇帝の出現と帝国覇権の置き土産【ゲームで世界を観る#89】
正当性でなく実力でのし上がった皇帝が皇帝としてあり続けるには、手にしている武力と政治力を、領土の隅々まで行き渡らせることができると示し続けなければなりません。少なくとも建前として元老院からの承認が必要なので、その力に値しないと見做されれば、あっという間に追い落とされるからです。それでなくても、権力を独占していればそれを快く思わないものも多く、文化の違う民族を統治すれば反発の声は避けられません。
対外戦争で華々しい勝利を飾る、喝采を浴びる大改革を断行する、それがかえって世を乱す火種になることもしばしばです。アウグストゥスのすぐ後にはカリギュラやネロが現れ、五賢帝の時代で安定したかと思えば、軍事力を後ろ盾にした僭称皇帝が乱立する「軍人皇帝」の時代が長く続きます。
ディオクレティアヌス帝によって権力の分散が行われるまで、50年で約70人ほどの「皇帝」が現れ、そのうち元老院の承認を得たのは26人だけ。内乱を収めるために権力を集中すれば、強権に反発して内乱が起き、その内乱の中で再び強力なリーダーシップが求められる。後にナポレオンが皇帝に就任するときも、革命後の内乱で軍政を掌握し、民衆からの支持を得ていました。遠い昔の遙か彼方の銀河系の帝国も、ローマと同じく非常時に強力な権限を得ることから始まりました。現代史でも何故独裁者が生まれるのか、その先例をローマの皇帝に学ぶことができるでしょう。
帝国が版図を広げるに当たって、皇帝の意志を行き渡らせるために必要なのが「言語の統一」です。属州には中央から総督が派遣され、状況の把握や命令系統の確立には中央と違う言語を介すと都合が悪いのです。欧州のラテン語を起源とする各言語や、南米でスペイン語、アフリカでフランス語が共通言語になっているのはその名残ですね。
民族それぞれの言語と文化を衰退させる一方で、広範囲を旅行するときに一つの言葉さえ覚えておけば良い。言語一つ覚えれば他の地域のどこでも仕事ができる。以前紹介したチェコスロバキアの独立やウクライナの言語問題など、現在にも直接続く問題であるだけに、帝国の功罪両面を知る必要があります。
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