「いつでも、なんでも診る」医師が日本にいない訳 「かかりつけ医」がいるのに“たらい回し”の例も
かつて「町医者」と呼ばれていた開業医は、住民の健康相談から急患まで、すべての病気を診療することが当たり前でした。けれども、そんな「町医者」の姿が、日本から見えなくなった気がするのです。 本来の医師は、専門外のことも含めて総合的に病気を診る能力があり、また、診ようとする姿勢も持っているべきです。 ■「総合診療かかりつけ医」第1号として このままではいけません。 これからの日本では、高齢者がどんどん増えるのです。高齢者には車を運転しない人が多く、歩行が困難な人も少なくありません。「耳鼻科で扱う病気ではないから、内科へ行ってください」と言われても、そう簡単には行けません。
認知機能が低下していて、思うように行動ができない人もたくさんいます。近くに頼れる家族や親戚がいない人も多いのです。にもかかわらず地域のクリニックが今のような臓器別・専門別のままでは、冒頭の男性のようなケースが日本中に増えるだけです。 この問題を解決するために必要なのは、初期診療で対応する「いつでも、なんでも、だれでも まず診る 総合診療かかりつけ医」です。もちろん「初期診療」だけ対応するわけでなく、1人の患者さんにずっと寄りそって伴走するかかりつけ医です。
この「総合診療かかりつけ医」は私が作った言葉です。 総合診療専門医と名前は似ていますが、違うものです。 患者さんが来院したら「いつでも、なんでも、だれでも、まず診る」。そして、容態によっては大きな病院に紹介する。本当のかかりつけ医として責任を持って診察した患者さんに寄り添う開業医のことを、私は「総合診療かかりつけ医」と呼ぶことにしました。 その総合診療かかりつけ医の第1号が、私です。 今の日本の地域医療の現場に必要なのは、「総合診療かかりつけ医」であり、総合診療かかりつけ医がいる「総合診療クリニック」です。
■患者さんの訴えすべてに対応する 総合診療かかりつけ医である私は、神奈川県綾瀬市という所で「総合診療クリニック」を開いています。平日の夜は8時まで、土日祝日も診療し、救急外来もおこなっています。 現在の日本のクリニックの多くは、医師が自分の専門領域を生かした専門クリニックで、診る症状や病気がおおむね決まっています。また、夜間や日祝日は休診というところがほとんどですから、特異なクリニックだといえるでしょう。