二度と見られない作品の“並び”!「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」
パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館。3つの大都市にある近代美術館が協力しあい、斬新な展覧会を実現した。これまで見たことがなく、おそらく2度と見られない組み合わせで作品が並ぶ「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」へ 【写真】「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」展示風景
ひとつのテーマに沿って、パリ市立近代美術館、東京国立近代美術館、大阪中之島美術館が所蔵作品をそれぞれ出展し、3作品でトリオを組んで展示するという、これまでにない形式の展覧会。 たとえばパリ市立近代美術館のアンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》と、東京国立近代美術館の萬鉄五郎《裸体美人》(重要文化財)、大阪中之島美術館のアメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》が並ぶ〈モデルたちのパワー〉。3作品とも片方の肘を曲げて横たわる女性が描かれているが、「ポーズが似ている!」という面白さとともに、それぞれの作風の差異が際立って見える。 【写真】左からアンリ・マティス《椅子にもたれるオダリスク》1928年 パリ市立近代美術館、萬鉄五郎《裸体美人》(重要文化財)1912年 東京国立近代美術館/展示期間:5月21日(火)~7月21日/8月9日(金)~ 8月25日(日)、アメデオ・モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》1917年 大阪中之島美術館
【写真】左から:辻永《椿と仔山羊》1916年 東京国立近代美術館、ラウル・デュフィ《家と庭》1915年 パリ市立近代美術館、アンドレ・ボーシャン《果物棚》1950年 大阪中之島美術館
この企画は、まず東京国立近代美術館と大阪中之島美術館の間で「美術館のコレクションの魅力を全面に打ち出すこと」を重視し、そのため「これまでにない切り口で提示すること」を追求した結果、たどり着いたものだという。それをパリ市立近代美術館に提案して快諾され、テーマの設定と作品のセレクトが始まった。 担当した学芸員は、パリ市立近代美術館のシャルロット・バラ=マビーユ、東京国立近代美術館の横山由季子、大阪中之島美術館の高柳有紀子。図録に掲載された「TRIO展について」には、3名の連名でこう書かれている。 “ボツになったトリオはざっと100以上、全体のリストも30回近く更新することになった” “3人の学芸員が納得しなければ採用されることはなく、その点に妥協はない。それは、自館のコレクションについての知識や、専門性を生かしつつも、3人の学芸員が、互いの意見に耳を傾けながら取り組んだ共同作業だったと思う” 企画会議は、月1~2回の頻度で、オンラインで作品の画像を見せ合いながら行われたという。トリオを組むテーマは、主題が同じ、モデルのポーズや色、形、構図、構造が似ている、時代背景が同じ、作家同士の交流があった、時代を超えて表現が呼応している、など、自由な発想と多角的な視点で設定されている。 この企画会議がどれほど楽しく、しかし大変で、充実したものだったかということは、学芸員ではない鑑賞者にも容易に想像できる。3つの作品を一つの視野に収めて眺めていると、その熱が心地よく伝わってくる。 トリオの数は34組。絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など、総勢110名の作家の150点あまりの作品が揃う。これまで知らなかった意外な共通点や違いに驚きながら、各トリオの作品とともに掲げられたテーマの解説を読み、この3作品がトリオになった経緯について思いを巡らせるのも、鑑賞者の楽しみとなるだろう。 作品の画像をモニタで見ながら決められたトリオは、展示会場で初めて実作品が並べられた。その際に、それぞれ想像以上の迫力や調和が見られたという。 記者内見会で行われた記者発表会で大阪中之島美術館の高柳有紀子学芸員は、立体作品のトリオについて「2つのモビール作品に対して当初別の作品を合わせることを考えていたが、考えた末にファウスト・メロッティの《対位法no.3》に決めた。実際に展示されるまで不安もあったが、思いがけず3作品が調和し、展示空間がトリオを超えて発光するかのようだ」と語った。