9社中6社が減益予想から好転、生保会社の業績が上向いている要因
国内主要生命保険会社の業績が上向いている。本業のもうけを示す基礎利益の2025年3月期は、9社中5社が前期比増益を予想する。9社中6社が5月時点の減益予想から好転した。円安による外国証券の利息・配当金収入の増加が主因だ。売上高に相当する保険料等収入は、日銀の利上げで魅力的な利回りの保険を販売できるようになり、上振れする企業が出ている。商品開発を強化すると同時に営業体制も整備し、「金利ある世界」の波に乗れるかが今後の業績を左右しそうだ。 日本生命保険、住友生命保険、朝日生命保険の3社が基礎利益を5月時点の横ばいや減益予想から増益予想に修正した。明治安田生命保険は減益予想のままだが、当初見込んでいた基礎利益4700億円程度から500億円増の5200億円程度に上方修正した。 各社とも当初、日本は利上げ、米国は利下げで日米の金利差が縮小し、25年3月の年度末にかけて円高を予想していた。だが、足元では、1ドル150円を超える円安が続く。日本生命や明治安田生命は年度末の為替予想を期初の同135円から145円に円安方向に修正しており、外国証券の利息・配当金収入が増える見通しだ。 米国では25年1月にトランプ政権が誕生する。景気刺激策の導入で米長期金利の上昇と足元の150円台のドル高・円安が継続すれば、基礎利益をさらに押し上げることになりそうだ。 一方、保険料等収入は、従来より利回りの高い商品の販売が伸びている企業で増収が目立つ。住友生命は告知を簡潔にした一時払い終身保険の新商品を4月に発売。既存の終身保険とともに、1・0%だった予定利率を6月と8月に段階的に引き上げ、12月には1・3%にする。新商品効果と予定利率の上昇により、「営業職員チャネルで一時払い終身保険の販売が好調」(住友生命の高尾延治執行役常務)と手応えを示す。 ソニー生命保険は、期初に通期見通しは減収予想だったが、資産形成効果が見込める変額個人年金保険の販売が伸び、増収予想に修正した。 日本生命と第一生命保険は、いずれも大型契約となる「団体年金が減少した」(日本生命の赤堀直樹取締役)ことが保険料等収入に響く。 とはいえ、日本生命は、25年1月に平準払いの年金保険の予定利率を約40年ぶりに引き上げる。第一生命は、運用成果に応じて金額が増える年金保険など個人向けの保険販売は増加傾向にある。こうした貯蓄性商品がどれだけ業績に貢献するのかが注目される。 9社の24年4―9月期実績は、団体年金が落ち込んだ日本生命と第一生命が減収となった。 変額保険などの責任準備金繰入額が増加したソニー生命と保有契約が減少した大樹生命が減益だった。