【博多ストーカー殺人】裁判メモ(2)「やめて」「ふざけんな」 刃物を振り下ろし…折れた先端は頭蓋骨に
2023年1月、福岡市のJR博多駅近くの路上で川野美樹さん(当時38)が刃物で複数回刺され死亡する事件が起きました。 その後、逮捕・起訴された元交際相手の寺内進被告(32)の初公判が2024年6月17日に福岡地裁で開かれ、被告は「刺したことは間違いないですが待ち伏せしたことは違います」と殺人罪については認め、ストーカー規制法違反の罪については否認しました。 弁護側は「待ち伏せした事実はありません」「恋愛感情はすでに失っていて、それに対する怨恨はない、ストーカー規制法については無罪」と主張しました。 この記事では、事件当日に現場で何が起こったのか?を中心に、公判2日目(6月18日)、3日目(6月19日)の廷内のようすを、TNC裁判担当記者のメモをもとに詳しく伝えます。 <裁判メモ(1)からの続き>
◆包丁の先端が折れて頭蓋骨に刺さっていた
公判2日目の6月18日、検察側は、事件現場付近で寺内被告が川野さんを襲う様子などを捉えた防犯カメラの映像を公開しました。映像は以下の4つです。 1)犯行現場へ向かい並んで歩いて行く2人、その後1人で走り去る寺内被告 2)犯行現場で2人が話し、数分後に寺内被告が川野さんに対して襲いかかり、倒れ込んだ川野さんに腕を何度も振り下ろす様子 3)寺内被告が走って逃げる様子 4)寺内被告が走って逃げる様子 また検察側は川野さんの傷の状況などを明らかにしました。 ・包丁の先端が被害者の頭蓋骨に折れて刺さっていた ・傷は頭部、顔、首付近、胸部、腹部、手足にあった ・右前胸部の傷は深さ20.5センチ、ほかにも深さ19センチの傷が複数あった ・右肺を貫通している傷もあった ・大静脈・心臓壁を損傷 ・背中から腹部まで貫通している傷もあった ・死亡推定時刻は(1月16日)午後6時20分ごろ、傷による失血から短時間で死亡したもの
◆「しゃがんで刃物を振り下ろしていた」
公判3日目となった6月19日、事件現場を目撃した女性が証人として出廷しました。 <検察側からの証人尋問> Q「当日(2023年1月16日)は何を?」 A「退勤して、午後6時半ごろに予約していたインフルエンザの予防接種に向かう途中でした」 Q「どのあたりで?」 A「会社が博多駅前通りで、病院に向かう前に博多駅前の郵便局へ向かって、大博通りを歩いているときです」 Q「どうなった?」 A「歩いているとき、コンビニの手前あたり左側で人垣ができているのを見ました。人の中心に男性が立っていて、横を通るとき男性が荷物か何か抱えていると思いました」 Q「男性はどのあたりでしたか?」 A「コンビニの横の小道に入る歩道近くで男性がつかんでいるのが人だと分かりました」 Q「男性はどんな体勢でしたか?」 A「立っていました」 Q「近づくきっかけは?」 A「通り過ぎるときは痴話げんかか、女性が酔ってつかんでいるだけなのか、よく分からなくて、人垣ができているけど危ない感じはないかと思ったんですけど、通り過ぎようとしたと同時くらいに、女性の『やめて』『いや』、男性の『ふざけんな』という声が聞こえて、周りの人垣から怒声に近い声で『警察呼べ』『やめろ』という声が聞こえたので近づきました」 Q「近づいたとき、2人の様子は?」 A「『警察呼べ』というのを聞いて、見たときは、男性しか目に入らなかった。何かを手に持って何回も振り下ろしている動作をしていた」 Q「何を?」 A「その時は分からなかったです」 Q「どこからどこへ振り下ろす動作をしていた?」 A「頭の横か上くらいから振り下ろしているように見えました」 Q「下へ?」 A「下に向かってです」 Q「先に何があるか分かった?」 A「女性の身体です」 Q「(女性の)身体のどのあたりに?」 A「はっきりとは分からないですが、髪の毛があったので上半身だと思います」 Q「それからどうなった?」 A「私も携帯を出して、警察へ通報しました。やめるのではないかと思い、1メートルくらいまで近づきましたが、すでに女性が道路に横になって、男性もしゃがんで刃物を振り下ろしていた。周りに目をむけることなく、女性だけをみていた」