緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか?
米国は振り上げた拳をどう収める?
ではアメリカは振り上げた拳をどう収め、北朝鮮はその拳をどう受け止めるでしょうか? 双方ともに、この危機を終息させないといけませんから、エスカレーション(拡大・激化) を起すことなく、双方の面子が立つ茶番劇が必要です。 北朝鮮の核やミサイル実験に対し、アメリカが何がしかの攻撃を行い、北朝鮮はそれに対して対抗措置を取ることになるでしょう。 しかし、それを受けて、アメリカが再攻撃を行わなければならないくらいの対抗措置では、エスカレーションが発生してしまいます。この点から、北朝鮮が日韓に弾道ミサイルを打ち込むことは考え難いといえます。日韓に被害が出れば、同盟国としてのアメリカの面子が立たず、再攻撃が必要になってしまいます。 ただし、日韓の近海にミサイルを打ち込む可能性は否定できません。その際も、無弾頭かせいぜい通常弾頭でしょう。核・生物・化学といった特殊兵器の弾頭を使う可能性は低いと言えます。 逆説的にアメリカの攻撃は、北朝鮮の対抗措置が、ここまでに及ばないものでなければなりません。 ※後編「緊迫化の着地点」は19日(水)に掲載する予定です。
-------------------------------- ■数多久遠(あまた・くおん) ミリタリー小説作家、軍事評論家。元航空自衛隊幹部。自衛官として勤務中は、ミサイル防衛や作戦計画の策定に携わる。その頃から小説を書き始め、退官後に執筆した『黎明の笛』セルフパブリッシングで話題になったことから、作家としてデビュー。最新刊は、北朝鮮危機における陸上自衛隊の活躍を描いた『半島へ 陸自山岳連隊』。他の著書に、『黎明の笛』、『深淵の覇者』(全て祥伝社)がある