緊迫する北朝鮮情勢(上)アメリカはどこまで「本気」なのか?
地上戦突入は米国にとっても困難
では湾岸戦争を戦ったように、北朝鮮で地上戦を展開できるかといえば、現在のアメリカにその体力がないことは明白です。財政的な理由がもっとも大きいですが、トランプ氏が大統領選に勝利した理由の一つに、対外関与よりも内政の充実を願う孤立主義的有権者の存在があったことも見逃せません。 その上、二つの要素から北朝鮮での地上戦は困難です。 まず第一に、朝鮮戦争のように、中国が北朝鮮側に立って参戦する可能性の存在。そしてもう一つは、シリア空爆を行ったことも含め、現在のアメリカは中東情勢に大きく関与しており、北朝鮮との地上戦を開始すれば、2正面作戦となってしまうためです。 こうしたことを、北朝鮮は明確に認識しています。 そのため、アメリカが中東情勢に関与し続けなければならないよう、3万発もの携行ロケット弾を船積みし、中東に送り込んでいるのです。昨年8月にエジプトで拿捕された密輸船は、単に資金を稼ぐためだけではありません。 地上戦が実行できない以上、アメリカ(トランプ大統領)の目的は、北朝鮮による核及びミサイル開発の鈍化から変更することはできません。 この事実も、北朝鮮は認識しています。 北朝鮮のナンバー2とされる崔竜海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党副委員長は、米国から核攻撃を受けた場合、北朝鮮も核攻撃で反撃する用意があると述べています。 言葉だけ見ると、核攻撃を行うという非常に強硬な発言に見えるでしょう。しかし、この言葉は裏を返せば、核攻撃されない限り、核は使用しないという、核の先制不使用宣言ととらえる事もできます。 北朝鮮としても、アメリカの目的が、核及びミサイル開発の除去ではなく、鈍化に留まるならば、ある意味で、それを受け入れ、この危機の落とし所を探っているのです。 ”力による平和”の構築を主張し、選挙に勝ったトランプ大統領は、瀬戸際政策を続けてきた北朝鮮にとって同類のようなものと言え、彼が拳を振り上げざるを得ないことを、北朝鮮も理解しているのです。