「なんて器がでかい人なんだって尊敬しました」MotoGPの後輩ライダー・玉田誠さん
ノリックからの祝福がめちゃくちゃ嬉しかった
1993年にMotoGP参戦させてもらったんですが大ちゃんとGPを回ることを自分は本当に楽しみにしていました。大ちゃんは、うまく言えないけどお互いに素の自分でいられるという感じで、いつも一緒にいて冗談ばっかり言い合って、子供みたいにちょっかいだして追いかけっこしたりして、周りに「何やってんだよ~」って呆れられるくらい仲の良い友人でした。一緒に夢の舞台だったMotoGPで戦えたらどんなに楽しいだろうって…。頑張っていたんです。 2003年に、やっと大ちゃんに追いついてGPに行けるようになった。でも、開幕戦鈴鹿GPの事故で、大ちゃんはいなくなってしまった。そのことを受け入れることは難しかったけど、俺より速いと思った唯一のライダーだったから、俺の前には大ちゃんがいる。だから、俺が勝てば大ちゃんの速さを証明することになるって…。その思いは、自分を支えてくれていたように思います。 なかなか勝てずにいましたが、ようやく勝利できたのは2004年のブラジルGPでした。この日は大ちゃんの誕生日7月4日で、その3日後の7月7日に母が亡くなります。闘病中の母に勝った姿を見てもらえたこともあり、自分としてはいろいろな思いがあって忘れることの出来ない優勝でした。 そのレースのウイニングランの時にノリックはわざわざ「おめでとう」って寄って来てくれたんです。それまでも気さくに話をしてくれて昔からの知り合いのように接してくれていたけど、同じレースを走っていたから本当は悔しいはずなのに心から喜んでくれていることが伝わってきて、めちゃくちゃ嬉しくて…。ありがたくて…。なんて器がでかい人なんだって、俺には出来ないなって尊敬しました。 ノリックとやりあったレースはあまりなく、一度、ザクセンリンクで自分の目の前でハイサイドして、ノリックは思いっきりぶっとんで行きました。日本人同士で負けたくないって気持ちはお互いに持っていたと思います。闘志満々でイケイケな感じで冷静になれない。絶対に守りに入らないってレーススタイルの阿部選手に自分も似ているところがあるなと思っていたので転んでしまった気持ちもわかると言うか…。