元チーム代表シュタイナーに対するハースの訴訟は棄却される。著書における写真素材の使用は商標侵害にあたらず
ジーン・ハースが所有するCNC工作機械メーカーのハース・オートメーションは、元ハースF1チーム代表のギュンター・シュタイナーとの商標紛争で法的な打撃を受けた。アメリカの判事は、シュタイナーと彼の自伝『Surviving to Drive』に対する同社の侵害請求を棄却した。 【写真】2024年F1第3戦オーストラリアGP 元チーム代表ギュンター・シュタイナーからインタビューを受けるケビン・マグヌッセン(ハース) 5月にハース・オートメーションは、シュタイナーが正当な許可なくハースのブランドと商標を著書で使用したとして訴訟を起こしていた。同社は、表紙を含む本に使用されている写真素材が、連邦政府に登録された商標を侵害しているとして特に問題視した。さらに、この本が「(同社の)独占的知的財産権を侵害して」販売されており、今年1月には「少なくとも450万ドル(約6億4000万円)の収益が生み出された」と主張し、そのために多額の損害賠償を求めた。 しかしシュタイナーは、ハースのロゴの使用は公正使用の範疇に該当し、憲法修正第1条によって保護されていると主張した。カリフォルニア州の判事もこれに同意し、ロゴは芸術的に本と関連しており、読者に明白な誤解を与えるものではないとの判決を下した。この判決は、商標法で一般的に用いられているロジャーズテストにもとづいており、事実上、ハース・オートメーションの損害賠償請求を却下した。 さらにアメリカ地方裁判所判事のアンドレ・ビロット・ジュニアは、この本は「シュタイナー氏がハースF1チームのチーム代表として経験したことを詳細に述べている」と指摘した。 「そうすると、必然的に彼はハースの名前に言及することになる。多くのスポーツの伝記と同様に、この本にはシーズンの写真が掲載されており、間違いなくハースの商標が見られる」 この敗訴は、知的財産権の保護を求めてきたハース・オートメーションにとって大きな打撃となる。裁判所の文書では、次のように述べられている。 「この本は、2022年シーズンにハースF1チームのチーム代表としてシュタイナーが経験したことを物語っている」 「ハースの商標が入った写真を使用することは、ハースF1チームの2022年シーズンについてさらなる背景を提供するための芸術的な選択だ」 「ここには、『著作物の出所』がハース・オートメーションであるという明白な表示、明白な主張、明示的な虚偽の表示はない」 「表紙の写真が暗に支持や後援を示唆しているという議論はあるが、ハースの商標によって明確に誤解を招くような発言や示唆がなされているわけではない」 「したがって、被告によるハース商標の使用はロジャーズテストの下で保護され、被告の申し立ては認められる」 弁護側は、ハース・オートメーションに訴訟費用の返済を求めたが、ハース社の訴えは「客観的に合理的である」とみなされたため、その申し立ては却下された。 残念なことに、ハースとシュタイナーの間の確執は、F1チームの所在地であるノースカロライナ州の裁判所での、両者を巻き込んだふたつ目の訴訟にまで及んでいる。来年まで解決しないとみられているこの訴訟では、シュタイナーが主に未払いの手数料と、宣伝資料における自身の肖像の無断使用について訴えており、チーム代表としての在任期間中にハースが雇用契約の条件に違反したとシュタイナーは主張している。 [オートスポーツweb 2024年09月30日]