安い電力は原子力と火力、高コストな再エネ推進では産業は空洞化し国民はますます窮乏化する
■ 不安定な太陽光や風力にかかるコストは軽視できない 付け加えると、これらのプラントは、まだ一度も建設されたことがないから、机上計算の段階である。実際に建設し運用すると、コストは膨らむのが普通だから、これでも楽観的な数字である。 太陽光発電や風力発電などはどうかと言えば、図1では太陽光発電は事業用が8.5円、家庭用が10.2円、風力発電は陸上で15.3円、洋上で14.8円となっていて、安いように見える。 ただし図1の数字には、太陽光発電と風力発電の出力が不安定であることは考慮されていない。 現在、日本の変動再エネ(太陽光発電と風力発電)の容量(キロワット)は、全電力の約3割である。発電量(キロワットアワー)で見れば約1割に過ぎないが、太陽任せ・風任せなので、容量(キロワット)はたくさん必要になるからだ。 そして、晴天時には一斉に発電するので、太陽光発電が過剰となり、出力抑制をするなどの事態が全国で起きている。そのため蓄電池を設置し、発電が過剰になった時には充電をするなどして対応しているが、蓄電池の費用はもちろん、充放電でロスが生じることでも費用が発生する。このようにして、発電コストは実際には高くなる。 変動再エネが不安定であることを考慮に入れ、それを電気として利用するために電力系統に統合する費用を考慮した発電コストが、今回は、次のように示された(本記事では「図2」とする)。 今回、政府が審議会で示したエネルギー基本計画案では、発電量での再エネ比率を4割程度から5割程度に上げるとしている。1割程度は既存の水力発電だから、残りの3割程度から4割程度は変動性再エネとなる。変動性再エネの発電量は全体の1割に過ぎない現状でも、容量は全体の3割もあるので、計画通りになると変動性再エネ電源の容量は電力全体の6割を超える。 すると図2を見るならばCケースに相当し、太陽光(事業用)はキロワットアワーあたり36.9円、陸上風力は25.2円、洋上風力は23.9円となる。 なお図2のタイトルに統合コスト「の一部」と書いてあるように、これでも送電線の建設などの費用がまだ算入されていないから、実際には洋上風力などの統合コストはもっと高くなる。