吉野家・伝説の築地1号店、豊洲に移転へ
魚市場の人向けに115年前に生まれた牛丼・吉野家の創業店「築地1号店」(東京都中央区)が、築地市場の移転とともに、江東区豊洲の新市場に移転することがわかった。築地市場は、世界最大級の水産物の取扱規模を誇る。ここで育まれた吉野家の牛丼は、今や世界に展開する日本食文化の一つとなった。建設が進む豊洲新市場は2016年3月に完成予定で、2020年東京オリンピック選手村は目と鼻の先。6年後、吉野家の牛丼をほおばる世界中のアスリートたちの姿が豊洲で見られるかもしれない。 吉野家によると、吉野家の創業は1899年。東京都中央区日本橋にあった魚市場に、個人商店として誕生した。忙しい市場の人たちのために、「早い、うまい、安い」食べ物を提供しようと生み出されたのが、吉野家の牛丼だった。この1号店は、関東大震災(1923年)の影響で、1926年に魚市場が築地に移転したため、一緒に移転。以来、営業を続け、現在に至る。 2004年、米国産牛肉が輸入禁止となり、牛丼の販売を休止せざるを得なくなった時期でも、この1号店は国産の牛肉を使って牛丼を売り続けたという逸話も残る。同社の1号店への思い入れは強い。吉野家は取材に対し、「豊洲へ移転するつもりで進めています」と、ルーツ店の移転を認めた。 東京都中央卸売市場によると、築地市場の場内には吉野家を含め、38の飲食業者が営業している。都はこれらの業者に対し、豊洲への移転を希望すれば、もれなく場所を確保する意向を伝達。その結果、すべての業者が豊洲への移転を希望。昨年11月、場所の抽選を終えたという。現在は、店内のレイアウト希望などを聞いており、それに沿って工事が進んでいる。 都によると、築地市場は昭和60年代に入り、施設の老朽化・過密化が目立ち始め、再整備を検討した結果、1999年11月、移転する方針が決定。そして、2001年12月、移転先は豊洲地区に決まった。 現在、豊洲で新市場の建設が進んでおり、2015年度中に完成する予定だ。市場関係者も、移転に向けた準備を進めつつある。