吉野家・伝説の築地1号店、豊洲に移転へ
5月下旬のある日、吉野家1号店を訪ねてみた。正午過ぎだったにもかかわらず、市場内に足を踏み入れると、車が行き交い、慌ただしい雰囲気。土産物屋や食べ物店が並ぶ「水神様通り」は、観光客や市場関係者らでにぎわっていた。その角に、吉野家第1号店があった。オレンジ色に染め上げられた入り口の大のれんが、ひときわ目を引いた。 コの字型のカウンターは15席ほどで、ほぼ満員。市場関係者と思しき、がっちりした体格の男性らが牛丼をほおばっていた。その中に、まさに今まで仕事をしていた雰囲気を漂わせる、エプロンと三角巾姿の中年女性の姿があった。 話を聞くと、近くの場外にあるおにぎり店従業員という。年は55歳。近くの月島に長年住んでおり、この1号店は30年以上通っている。女性は「すき家とか松屋とかあるけど、吉野家が一番おいしい。昔からなじみだから、市場の移転でここがなくなると、寂しいね」とぽつり。牛皿とご飯を平らげると、自転車にまたがって場外へと消えて行った。 市場や周辺の働く人たちの胃袋を満たし続けた伝説の1号店は、近く幕を閉じる。だが、新市場でまた新しい歴史を刻んでいくことだろう。 (文責・坂本宗之祐)