センバツ2022 丹生、九回に意地の3点 一度は逆転、逃げ切れず /福井
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)で丹生は大会第5日の23日、1回戦で広島商と対戦した。試合は3点を追う二回表に主将の来田がチームの甲子園初安打を放つと、吉田の2点適時打などで4点を奪い逆転。しかし、直後に逆転されると、古豪のそつの無い攻勢を止められずに失点を重ねた。それでも九回表には梅田の適時打などで3点を返し、意地を見せた。【大原翔、国本ようこ、長沼辰哉、山口一朗】 3点を先制された丹生だったが、主将の一打が反撃の糸口となった。二回表、先頭打者の来田が三遊間を破って、チームの新たな歴史を築く。1死後、梅田が内野安打でチャンスを広げると、父和紀さん(51)は「うれしくて泣きそうだ。信じていた」と目を潤ませた。 続く木津が死球で出塁し1死満塁にし、打席に立った田村は「ゲッツーでもいい。来た球をしっかり打つ」と意気込んでバットを振った。強い当たりはショートゴロになり、この間に来田が生還。甲子園での初得点が生まれた。田村の父一夫さん(50)は、チームの甲子園初打点を挙げた息子の活躍に「先制され、点がほしかった」と顔をほころばせた。 勢いは止まらない。次の吉田は「狙いの直球を思い切り振った」と左翼に鋭く打球をはじき返し、一気に同点。「部活後もバッティングセンターに通って練習した成果が出た。泣きました」と母絵里子さん(44)は喜んだ。打線はさらにたたみかける。1番赤星の四球などで2死一、三塁から、2番井上が「走者を絶対還す」と闘志を込めて振り抜いた一打で、4点目を挙げ逆転。父誠さん(48)は「ありがとう、ようやったな」とねぎらった。 その後は失策もあり、失点を重ねた。だが試合の大勢が決した後の九回表、丹生打線は意地を見せる。2死満塁で梅田が「1点でも多く点を取ってチームを盛り上げようと思った」と、右翼前の2点適時打を放つなど、最後までスタンドを沸かせた。試合は敗れたが、春木竜一監督が鍛えてきた打力を存分に発揮した選手らに、アルプススタンドに集まった約600人の関係者らは惜しみない拍手を送った。 ◇夢舞台立った選手らに感謝 新ユニホームに校名 書家・草壁さん ○…丹生の選手らがセンバツ前に春木竜一監督から手渡されたユニホームの胸にプリントされた「丹生」の文字は、春木監督の元同僚で現在は書道教室を主宰する草壁麻衣子さん(35)=写真=が揮毫(きごう)したものだ。それまでのユニホームは、春木監督が2013年に着任した際に草壁さんが書いたものだったが、甲子園初出場を機に新調。約200パターンもの候補から、春木監督が「選手に求めたい迫力や荘厳さが表れた字体を選んだ」という。23日の試合をスタンドから観戦した草壁さんは「伸び伸びとしたプレーを見せてくれてうれしい。自分の字を身にまとった選手たちが夢舞台に立ち、書家として一つ夢がかなった。ありがとう」と話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球 ◇家族の思い背に、誇り 来田竹竜主将(3年) 父浩史さん(45)と、兄宗純さん(20)、達磨さん(19)はいずれも丹生野球部OB。兄2人は2019年夏の福井大会の準優勝メンバーで、達磨さんは主将も務めた。3人の夢だった甲子園で、チーム史上初の安打を放った。 使った道具は率先して手入れする、真面目な性格。しかし、春木竜一監督に主将に指名されるまでは人前に立つタイプではなかった。それでも、主将としてチームをまとめるうち、試合前などでの選手への指示出しを積極的にできるようになった。 昨秋の県大会はけがのため出場できなかった。その苦しみを身近で見ていた浩史さん。甲子園では声だけではなくプレーでもチームを引っ張る息子に「主将を任せてもらえて成長できた」と喜んだ。その息子は試合後「甲子園を楽しめた。家族の思いを背負って立ててうれしく誇らしい。課題克服に向けチーム一丸となって頑張りたい」と力強く語り、聖地を後にした。