「もっと弱いところをシェアしていい」水原希子が大切な人から学んだ“幸せの築き方”
自分の生き方を貫くクールでタフな女性。水原希子と聞いて、そんなイメージを抱く人は多いかもしれない。 そのイメージは正しい部分もある。彼女はどんな質問に対しても、自分の頭で考え、自分の言葉で話す。聞こえがいいだけの間に合わせの回答で誤魔化したりしない。彼女の生き方には、彼女だけの信念がある。 一方、クールでタフという印象はいい意味で裏切られた。目の前の水原希子はナイーブな感受性を併せ持ち、そんな自分も肯定しながら大きな愛で他者を包み込む柔らかで聡明な女性だった。 【撮り下ろし多数】3年ぶりの出演映画で臨床心理士役に挑戦し、常にその生き方が注目される水原希子 現在LAとの二拠点生活を送る水原だが、3年ぶりの映画出演となった『徒花-ADABANA-』ではクローンが実用化される世界で重篤な病に冒された患者たちに寄り添う臨床心理士、まほろ役を演じた。時代や社会とまっすぐ対峙する水原にとって、映画で描かれた無機質でいびつな世界はどのように映ったのか。紡がれた言葉から見えてくるのは、水原希子の幸福論だ。
幸せとは、この人のために頑張りたいと思える人がいること
──本作では裕福な人だけが「それ(=クローン)」を所有できるという格差社会が映画の序盤から描かれていました。水原さんはこの世界観についてどんな感想を抱きましたか。 クローンは別にしても、いわゆる上流階級の人たちだけがアクセスできる場所やサービスは現実にもいっぱい存在していて。アッパークラスの人たちしか知り得ない情報というのもきっとあると思うんですね。そう考えたら、悲しいけど決して私たちが生きている現実と遠くない世界なのかなと。もしかしたら、もうこの世に存在していてもおかしくない気がしました。 ──持てる者と持たざる者の間で命すらも選別されてしまう、なんとも不条理な話です。 フェアじゃないなと思ったし、世の中にはフェアじゃないことがいっぱいあるなと私自身も感じています。ただ、世界中のいろんな人と会ったり、それこそファッションウィークに行くと、想像もできないような富裕層の方たちがたくさんいて。でも彼ら彼女らがお金を持っているから幸せかというと、まったくそうではないと実感するんです。むしろ上流階級に生まれたことによって一生逃れられないカルマを背負うこともある。だから確かにフェアではないけれど、幸せの定義そのものは、きっとお金を持っている・持っていないとはまた違うところにあるんじゃないかと思いますね。 ──面白いですね。水原さんの幸せの定義について聞いてもいいですか。 この人のために頑張りたい、この人の幸せを祈りたいと思える人がいることが幸せなんじゃないかと思います。結局、人は人とつながることで生きていける。たとえお金持ちになって、ほしいものを全部買って、それを家じゅうに敷きつめたところで、満たされるかといったらそうじゃないと思うんですね。誰かと一緒にいることで、人は幸せを感じられる。自分が疲れていても何かしてあげたいと思える人がいるとか、あの人元気にしてるかなと思える人がいるとか、そういうのが幸せなのかなって。 ──私事ですが、20代までは他人への嫉妬や反骨心がモチベーションになっていました。でも30代になって、自分のためだけには頑張り続けられないことに気づいたんです。それより誰かのために頑張った方がパワーが出るなって。 わかります。私もそうでした。私は10代でモデルの仕事を始めて。当時は、自分が表紙を飾れるなんて思っていなかった。けど、『ノルウェイの森』という大きな作品への出演が決まって世界が180度変わって、わかりやすく手のひらを返してくる人たちがたくさんいました。当時はそうやってすり寄ってくる人たちに対して、見返してやったという気持ちも正直あったし、ネガティブなエネルギーが20代の私のモチベーションでした。でも私も同じように30代になって、気持ちが変わったんですよね。 ──何かきっかけがあったんですか。 コロナも大きかったけど、いちばんはインドに行ったことかもしれないです。最初はガンジス川に入るつもりはなかったんですけど、入らなきゃいけなくなっちゃって。ガンジス川ってドロドロで汚いんですね。でも、ちゃんと全身入らないとカルマはとれないと現地の人に言われて。とにかく何も考えずに祈っていたら、自然と母の顔が浮かんできたんです。 ──お母様が? うちの母は私と妹のために尽くしてくれて、毎日私たちの幸せを祈ってくれるような人でした。だからかな、私もあそこで母のために祈りたいと思った。そして、母や妹のように、この人のために祈りたいと思える人が身近にいるって、なんて尊いことなんだろうって気づいたんです。あの体験は私の中で大きなきっかけだったかもしれない。 ──すごい。やっぱりインドに行くと人生変わるんですね。 それすごい嫌だったんですよ(笑)。ガンジス川でスピリチュアルな体験をするって典型的すぎるじゃないですか。だからちょっと嫌だなと思ったんですけど、やっぱり特別な場所ですね、あそこは。