夫が亡くなり、残った財産は「築35年の自宅」と「預金1000万円」程度です。4人の子どもに遺産を現金で渡すと「自宅」を手放す必要が出てきそうですが、住み続けることはできないのでしょうか?
家族が亡くなると、基本的にその財産を遺族で分けて相続することになります。 ところが、遺った財産が土地や住宅のように物理的に分けることが難しく、現金に換金しないと家族に分けることができないということもあるでしょう。 このような場合、相続分をきちんと分けるために住み慣れた家を売却しないといけないのでしょうか。本記事では、相続の基本と遺産の分配について解説していきます。 ▼年金「月15万円」を受け取っていた夫が死亡。妻は「遺族年金」をいくら受け取れる?
遺産の相続割合の基本
民法第900条では、法定相続の割合として、相続人が配偶者と子どもの場合は、配偶者が全体の2分の1、子どもがその残りを人数分で平等に分けると定めています。つまり、今回のように相続人が妻と子ども4人の場合は、妻が2分の1、子どもがそれぞれ8分の1ずつ分けることになります。 遺された財産が築35年の住宅と預金1000万円で、住宅の価値が土地も込みで2000万円だったとしましょう。この場合、すべての財産は3000万円なので、法定相続分通り配分すると妻が1500万円、子どもは375万円ずつとなります。
住宅を手放してまで遺産を分ける必要があるのか
もし相続人である子どもに渡す法定相続分が、預金を超えてしまった場合、住宅を手放して支払わなければならないのでしょうか。残された妻の立場からすると、思い出のある家を売却して新たに家を購入したり、アパートを契約したりするのは、妻のその後の人生を考えても現実的ではない気がしますね。 実はこのように相続が発生した後も配偶者が家に住み続けられるよう、「配偶者居住権」という権利があります。この権利が認められれば、配偶者は自宅に住み続けることが可能となるのです。 配偶者居住権そのものは、遺産分割における「配偶者の持ち分」には含まれないため、基本的に他の相続人の法定相続分が減少することはありません。ただし、今回のように住宅に住むことによって妻の受け取る財産が法定相続分を超えている場合は、他の相続人が相続する財産の総額が減少することがあります。 また配偶者居住権が認められても、家そのものの所有権は他の相続人に渡る場合があります。所有権と居住権は別のものとして扱われますので、居住権がある配偶者が家に住み続けつつも、他の相続人がその家の所有者となることも可能です。