寝不足は酔っぱらっている状態と同じ…睡眠時間が仕事のパフォーマンスに大きく影響する理由
みなさんの一日の睡眠時間はどれくらいですか? 職業や家庭の状況、ライフスタイルなどによって人それぞれですが、理想の睡眠時間とはどれくらいなのでしょうか。また、睡眠不足が続くと身体や心にさまざまな悪影響があると聞きますが、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。快眠メソッドをメディア連載や自身の著書で提案している睡眠コンサルタントの友野なおさんに、睡眠時間と人間の能力・機能の関係性について詳しく解説していただきました。 【写真】「6時間の睡眠時間」は十分ではない…2週間続いてしまうと…?
4時間睡眠が2週間=丸2日間徹夜した状態
日本人には古くから睡眠を軽視する風潮があり、「睡眠時間を削って仕事をした」、「徹夜して勉強をした」などと自慢げに語り、「睡眠不足は美学」という意識が潜在的にはびこっているように思います。しかし、睡眠スキルはビジネススキルともいえるくらい日中のパフォーマンスに直結しています。 仮に4時間睡眠が2週間続くと、丸2日間徹夜したときと同じ状態になり、さらに6時間の睡眠でも2週間続いてしまうと、丸1日徹夜したときと同じレベルの認知機能になることが明らかになりました(※1)。 講演会などで「普段、どのくらい眠っていますか?」とお聞きすると、6時間程度の睡眠をとっている方のほとんどは胸を張って「6時間ちゃんと眠っています!」あるいは、「6時間も眠っていますよ!」とお答えになります。 しかし、実際は6時間の睡眠時間は十分ではなく、6時間以下の睡眠時間の日が続くと、寝不足が蓄積される「睡眠負債」がどんどん溜まり、各方面にダメージを及ぼしているのです。理想の睡眠時間は、1日7~9時間。アメリカの国立睡眠財団が提唱しています。
寝不足は飲酒時のように作業能力が低下
また、これまでの多くの研究にて、睡眠不足は人の反応を鈍くし、思考力、判断力、意思決定力、記憶などを低下させ、ミスや事故の可能性を高くすることがわかっています。 ある大学の研究で行われた睡眠不足と安全性に関する調査でも、24時間勤務のシフトが組まれた医学実習生の方が、16時間勤務のシフトが組まれた実習生よりも、重大な過ちを犯す可能性は36%も高く、さらに患者の死につながる過失を犯す確率が300%高くなることが報告されました(※2)。 国内でも、中小企業の労働者2800人を対象とした調査で、不眠のある群はない群と比較した際、不眠がある群は業務中の怪我の経験が多いという報告がされています(※3)。適切な睡眠がとれていなければ、安全に働くため、あるいは能力を発揮するための仕事に求められる覚醒度が維持できません。 さらに、オーストラリアで行われた実験では、睡眠不足ではアルコール摂取時と同じように作業能力が低下するという結果が報告されています。起床後、昼寝をせずに17時間を超えると、課題対応能力が血中アルコール濃度0.05%の酒気帯び運転と同等レベルまで低下することが明らかになっているのです(※4)。 たとえば、6時に起床した人が、23時まで仕事を続けた場合、酔っぱらいながら作業をしていることと同じような状態になるので、クオリティの高い生産物が生み出せるとは考えられません。ましてや車を運転していれば飲酒運転をしているのと同じことになり、危険です。 人間が人間らしくあるための機能の大部分に関与している脳の前頭連合野という部分の働きが睡眠不足によって低下することは、ありとあらゆる生活行動に悪影響を及ぼします。ですので、睡眠は脳だけでなく、心身の健康維持としてとても重要な意味をもつ生活習慣なのです。