【京都】大正時代の美を今に伝える、一棟貸しの宿へ【大人のための至福のホテル案内】
床の間と飾り棚が備えられた和室、雪見障子を隔てた縁側、今となっては貴重な大正ガラスが嵌め込まれた窓の向こうの庭には、宿の名前の由来となった伽藍石が圧倒的な存在感を放つ。
そして床の間には辻村史朗氏の壺、玄関には細川護煕氏の花器をはじめ、キッチンに置かれたイギリス製アンティークのカフェテーブル、寝室に置かれたフィンユールのライティングビューロー、それぞれの家具にぴったりな椅子など、植良氏が時間をかけて選んだ一つ一つの調度品が、ずっと前からそこにあったかのように室内の佇まいに馴染んでいる。
そしてもう一つ、センスが光るのが二階の寝室にある大きな砂時計だ。 「テレビや電子機器類を置かずに、お客様には伽藍下鴨で過ごす間は何もしないという時間を大切にしていただけたらと思いました。時計を置くと、どうしても時間を気にしてしまいますよね。ゆったりした時間を感じていただくためにはどうしたら良いか考えた結果、砂時計が相応しいと思いました」(植良氏)
何もしない贅沢を楽しむ中にも、伽藍下鴨には大人の遊び心をくすぐるものがある。庭にある蔵だ。秘密基地のような蔵の入り口に立つと、中は一体どうなっているのだろうと自然と好奇心が湧いてくる。
一階はウイスキーを中心に自然派ワインを揃えたバー。グラスを傾けながら二階のライブラリーで本を読む。しかも、ライブラリーは本のタイトルを隠したブラインドライブラリー。どの本を読むのかは実際に手にしてみないとわからないという、ちょっとした仕掛けがある。 滞在中の食事は、植良氏が中京区久遠院前町で主宰する「Zero Waste Kyoto(ゼロ・ウェイスト京都)」で扱う無農薬や無添加の食材を使った料理を中心に、ケータリングやシェフの派遣が可能だ。事前の予約により、好みの食材をヒアリングした上でオリジナルのメニューを組み立てるという贅沢な食事だ。料理を作るのは大原でカフェ「来麟」を経営し、野菜ソムリエの資格を持つ中山氏、出町升形商店街のビストロ「DELTA」で腕を振るう近江氏や、Zero Waste Kyoto の「Komorebi Kitchen」のイギリスからやってきたJosh Broad氏ら国籍の垣根を越えた面々。 彼らの食事に共通するのは身体に優しいこと。ヴィーガンやグルテンフリー対応は得意分野だ。もちろん三食とも外で食事をすることも、夕食だけ、昼食だけのように一食ずつ食事をリクエストすることもできる上、すりガラスの窓が大正ロマンの雰囲気を醸し出すキッチンで自炊もできる。