夫婦同姓は日本の伝統といえるのか…昔は保守派が「夫婦同姓」に反対していたのに今は固執するワケ
■比較的新しい「伝統」の共通点 日本において、いったい何が「保守」なのかということは、必ずしも明確ではなく、大いに議論を呼ぶところである。 現在の石破首相も、自民党を保守政党とはとらえず、「国民政党」としてとらえている。自民党のなかには、そのようにとらえる政治家が存在する。 保守は、何より伝統ということを重んじるが、伝統がどこまで遡るものであるのかは相当に難しい。 選択的夫婦別姓に反対する保守派は、夫婦同姓が伝統だとするが、それはあくまで「明治になってからの伝統」であり、近代社会が生み出したものである。その点で、皇位継承について男系男子が伝統であるとする議論と共通している。 社会は絶えず変化し、しかも、そのあり方は大きく変わっていく。変化が起こってしまうと、それ以前のことがわからなくなってしまう。私たちは、伝統だと言われる事柄が、いったいいつまで遡れるものなのかを確かめていく必要がある。 多くの場合、それほど昔に遡るのは難しい。少なくとも夫婦同姓や男系男子での皇統の継承は明治以降に生まれた、比較的新しい「伝統」である。にもかかわらず、伝統ということが持ち出されるのは、他に正当な理由を述べることが難しいからなのではないだろうか。 ---------- 島田 裕巳(しまだ・ひろみ) 宗教学者、作家 放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『教養としての世界宗教史』(宝島社)、『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。 ----------
宗教学者、作家 島田 裕巳