新東京が語る、幾何学的なサウンド、メタ的な視点をテーマにしたコンセプトEP
3つの次元を描いて、それを今聴いている人に体感させたかった
―1stアルバム『NEO TOKYO METRO』はすごくキャッチーな作品だと思ったんですけど、『新東京 #5』は幾何学的でちょっと難解な印象でした。このEPシリーズとフルアルバムの違いって明確に線引きされているわけですか。 田中:幾何学的なサウンドみたいなものは、今回はすごく意識していました。ただ、難解にしようっていうつもりはなくて、好き勝手にやっていたらこういう感じになったんです。EPのシリーズとアルバムの違いはあんまりなくて、アルバムはこれまでの新東京を1回振り返って全部新曲で作ってみたんですけど、今回は4曲という枠の中で、色々作ってみて新しいことに挑戦しようっていうのがありました。 ―今回の「メタ的な視点」というテーマはどこから出て来たのでしょうか。 大蔵:遠征中の車の中で、たわいもない話をしている中で、たまたま「『マトリックス』とか、メタ的なものって面白くね?」っていう話になって。『ソフィーの世界』って本があるんですけど、それも結構メタっぽい展開があるみたいな話をしていて、そこら辺からぼんやり決まって行った感じです。 ―「n+1」という曲で、こちらに話しかけてくるメタ的な瞬間がありますよね。これはどうやって出来上がったんですか。 杉田:4作品全部メタをテーマにしつつ、別の切り口ではメタに関連した概念とかに触れているんですけど、「n+1」は、特にn次元とn+1次元とn-1次元の3つの次元を描きたくて、それを今聴いている人に体感させたかったんです。やっぱり、メタっていう概念とか僕らが言いたいことと、聴いている人の実生活とのオーバーラップ的な要素がないと、「何か難解なことをやってるな」って思っちゃうじゃないですか? 僕たちが表現したいことが、どうあなたの人生や生活に関わっているのかみたいなところまで示したいっていう思いがありました。その中でn-1次元からn次元に対する干渉みたいなものを実際に何かを仕掛けて表現できないかって考えたときに、出来上がった状態の曲から、今聴いている人に対してリアルタイムで何かを言い合ったりする内容があったら面白いんじゃないかなと思って。元々いろんなパターンがあったんですけど、何かを話しかけて感想を求めたりして、その後「そういえばこの曲から語りかけられるのって意外なことですよね」みたいな感じで去っていくっていう感じにしました。 ―曲の中から話しかけてくるってちょっとドキッとするし、面白いですよね。他にどんなパターンを考えていたんですか? 杉田:最初、大蔵も喋ってました。 大蔵:僕が喋るパターンは、聴いている人の靴下の色を当てるっていうやつで。当たったらビックリするじゃないですか? 一同:(笑)。 大蔵:結果、それはボツになりました(笑)。 ―結果、ベースソロだけ残ったわけですね(笑)。この曲も含めて、新東京の曲づくりのアプローチってどこから始まるのでしょうか? よくある話だとまずリズムを決めて始まるってこともあると思うんですけど、このバンドではどうなんでしょう。 保田:リズムから決めるっていうのは、うちではないですね。曲によって流れが違うんですけど、今回の『新東京 #5』は、トシ(田中)が作ったデモが送られてきて、例えばビートができてて、そこに対して「もっと別のビートは考えられますか?」みたいに投げてきて、「こういう可能性もあるかもね」みたいなものを僕が提示して、「でもそれ良くないから使いません」とか(笑)、「それはいいから採用します」みたいなやり取りをして出来上がった感じが今回ドラムの作り方でした。 ―ほぼデータのやり取りでアレンジが完成しているんですね。 田中:「新東京 #3 (Organic)」というEPの2、3曲は、スタジオでみんなで即興でやりながら、ライブバージョンそのままで使ったんですけど、基本的にはデータのやり取りでやっています。それは最終的にみんなの耳に届くデジタルということもあって、音に細かくフォーカスして一番良い音を探すという意味考えています。 ―ライブを見て、ジャムセッションで即興演奏を繰り返してアンサンブルを積み上げてきたバンドなのかなと思っていました。 田中:ライブを観た人から、よくそういう感想をいただくんですけど、ライブの新東京と音源の新東京はまったく別なので。最近になってライブで自分たちが曲をものにして、そういうふうな観られ方をするようになってきたと思っているので、それはそれで良いかなと思ってます。「新東京 #3 (Organic)」みたいなセッションで曲を作るっていうのも、またありかなとは思ってます。