男子100mの激戦を制したケンブリッジ飛鳥の強さの秘密と9秒台の可能性
日本陸上界は、昔ながらの筋トレを行っているチームが大半だが、ケンブリッジは専門家の指導のもと、最先端のトレーニング器具を使い、オリジナルのメソッドで肉体を改造。今年1月中旬と5月中旬のデータを比較すると、「体重はほとんど変わっていない」というが、筋量が2.5kg増えて、体脂肪は1.5kg減った。身長1m80cm、体重76kgのボディは体脂肪率4.4%。動きが俊敏になっただけでなく、ウエイトのマックスもUPした。その結果はトラックのタイムにも表れている。 5月21日に行われた東日本実業団の男子100m予選で、日本歴代9位となる10秒10(+0.7)をマーク。日本人では初となる“9秒台候補”に名乗りを挙げた。 リオ五輪での目標を尋ねると、「世界の舞台で自己ベストを更新したいなと思っているので、ひとつでも多くのラウンドを走りたいですね。9秒台ですか? チャンスはあると思います。がんばります!」とチャーミングな笑顔を見せた。 ケンブリッジだけでなく、10秒01で2度走っている桐生、向かい風のコンディションで10秒06の自己ベストをマークしている山縣。この3人には「9秒台」を出すだけのポテンシャルは十分にあるだろう。 世界大会で自己ベストを更新するのは簡単なことではないが、4年前のロンドン五輪では、当時20歳の山縣が日本人五輪最高の10秒07で駆け抜けている。今季、日本勢は向かい風に苦しめられることが多かっただけに、リオ五輪は大きなチャンスだ。誰が最初に“夢の領域”へ飛び込むのか。9秒台をめぐる冒険は、いよいよクラマックスを迎えることになる。 (文責・酒井政人/スポーツライター)