ノーベル化学賞の吉野彰氏が会見(全文2)まだまだ謎だらけでわくわくする
日本の大学の研究力をどう受け止めているか
科学新聞:科学新聞の【ナカムラ 00:28:57】と申します。おめでとうございます。 吉野:はい、ありがとうございます。 科学新聞:今ちょうど、アカデミックのお話が出たんですけれども、最近、日本の大学の基礎研究力とか環境がどんどん劣化して、論文数なんかもどんどん低下したり、被引用数も減っていると。そういう状況について吉野先生はどのように今受け止められているのか、どういうふうに改善したらいいのか、そこら辺のお考えを教えてください。 吉野:基本的に今おっしゃったように、ちょっと私自身も今の大学の状況につきましては、ちょっと危惧しております。私の考えている理想的な大学での研究っていうのは、両輪が必要かと思うんです。1つは、完全にある目標に向かってそれを実現するために進める研究ですね。いわゆる、俗にいう役に立つ研究をしなさいっていうことで、それは1つです。これは当然、必要です。 片や当然、誰もが気が付かないような新しい現象を見付ける人も絶対要るんですよね。これは目的を先にやっちゃいますと、絶対それは出てこないと思います。ですから、そんなにお金の掛かる研究ではないと思うんですけどね、まさに大学の先生のご自身の好奇心に基づく、あるいは真理の探究、それで基礎研究をやって、中にはそういった先生でとんでもないものを見付けられる可能性がありますんでね。ですから、基礎研究は基礎研究で片輪があって、で、役に立つ研究っていう両輪があって、その2つがバランスしながらいくのが私は理想的だと思ってます。 で、ちょっときつい言い方になるかもしれませんが、今の大学っていうのはその真ん中辺りをうろうろしてるなっていうのをちょっと危惧してます。 司会:そうしましたら、そちらの前から3番目の一番はじの方に。
いいものをつくったなと実感した時は?
時事通信:時事通信、【マツダ 00:31:05】と申します。こちらです。 吉野:はいはい。すいません。 時事通信:先生が自分で開発された電池を、実際にどこかのときに使われて、これはいいものをつくったなというふうに自分で実感されたときっていうのは、どんなタイミングでどんな品物でそう思われましたか。 吉野:リチウムイオン電池が出て、最初に広く使われ出したのが、今でいうガラケーですよね、携帯電話ですよね。で、どういうわけか私自身、ああいう携帯を持つっていうことが非常に拒否感がございまして、つい先だってまでは持ち歩いてなかったんです。ですから、そういう携帯という便利なツールが出たときに間違いなくリチウムイオン電池が役に立ったんですけど、私自身は実感しておりません。 時事通信:どうもありがとうございました。 吉野:はい。 司会:すいません、皆さまにご連絡申し上げます。総理大臣からの電話が8時10分ごろの予定だそうです。そのあと続きまして、8時15分ごろに文科大臣から電話が入るという予定になっております。 こちらの、吉野さん、こちらで受けるようにします? こちらで受けて、吉野さんのほうにお届けするようになりますので。 吉野:はい。 司会:そのときにはすいません、質問の途中でちょっと中断をさせていただくことになると思いますが、ご承知おきください。 中断して申し訳ありません。じゃあ、ずっとお待たせしていたので、今、お答えいただいた方の2人お隣の方。前から3番目の方、お願いします。