ギャンブルは前回の倍額を賭ければ必ず勝てる…⁉この論理に潜む驚きの「落とし穴」に気が付きますか?
食塩水の濃度や往復の平均速度など、仕事などでちょっとした算数の知識が問われる場面に出くわして、ドキッとしたことはないだろうか。「昔は解けたのに……」、そう思うのに解けない。そんな大人たちは本連載で今一度、算数を基礎から学び直してみてはどうだろう。 【漫画】月500時間、時給340円…雇われ店長が明かす「過酷すぎるコンビニ勤務」 長年、算数・数学教育に携わってきた桜美林大学名誉教授・芳沢光雄氏の新刊『大人のための算数力講義』(講談社+α新書)より抜粋して、「算数の重要な考え方」をお届けする。 『大人のための算数力講義』連載第10回 『AI時代の必須知識は「むずかしい数式」ではない…最も重要なのはとある「言葉」の用法だった! 』より続く
「必ず勝つ」法則の落とし穴
主に社会人対象の内容ではあるが、マーチンゲール法という賭け方を御存じだろうか。 たとえば最初は1万円を賭ける。それに負けたら次は2万円を賭ける。また負けたら次は4万円を賭ける。そのように負けたときは次に倍の金額を賭けることにすれば、いつかは勝って、勝ったときにはトータル1万円の利益になる。そして勝ったときの次は、再び1万円の賭けから始める方法である。 1回目と2回目と3回目に負けて4回目に勝ったならば、1万円、2万円、4万円がマイナスで8万円がプラスなので、トータルで1万円を得ることになる。その次は、また1万円を賭けるのである。 このマーチンゲール法は、必ず勝つ方法だと考えてしまう人が多くいる。 この考え方の問題点は、「いつかは勝って」の部分にある。 「n回目までに必ず勝つという自然数(正の整数)nはあるのか」と自問すればすぐに分かるように、nをいくら大きい自然数としても、そのような自然数は存在しない。 一方、どんな資産家でも賭けに使えるお金には上限があり、すなわち連続して負け続けても大丈夫な回数には最大の自然数があるので、その回数を超えないうちに勝たなくては、マーチンゲール法の考え方は成り立たないのである。