街中に突如現れる横浜で唯一の「渓谷」高架下公園は巨大なエリンギの森だった
横浜市内中央部をほぼ南北に走る横浜環状2号線。鶴見区から磯子区をつなぐこの環状道路は、東海道新幹線・新横浜駅に通じ、国道1号、保土ヶ谷バイパス、横浜新道、横浜横須賀道路などと交わることもあり、交通量の激しい幹線道路です。 【写真】横浜で唯一の渓谷「陣ケ下渓谷公園」の魅力を見る(全8枚) 市内保土ケ谷区の通過ポイント高架下に、横浜市で唯一の渓谷があります。住宅街に囲まれた渓谷は陣ケ下渓谷公園と言います。
鎌倉殿の13人と関係の深い深山幽谷な渓谷
その高架下にある公園は保土ケ谷区川島町にあります。横浜環状2号線の川島町のトンネル部真下あたりの住宅街に公園入口が口を開けています。神奈川県内を横浜駅から西に走る相鉄線・上星川駅や西谷駅からの来場口となります。 陣ケ下渓谷公園はその名から武士の関与が想像できると思いますが、そもそもは和田義盛ゆかりの名称だそうです。そうです、先の大河ドラマの鎌倉殿の13人の一人です。義盛が狩の陣を張ったことから陣ケ下の名前が残ったと言われています。 入口から園内のせせらぎを下に、上には環状2号線の高架がかかり昼なお暗い森を形成しています。ほどなくして渓流の表示。石畳状の沢底にゆるりと渓流がつたう渓谷は静謐にして幽玄。気ぜわしい幹線道路の下とは思えない空間には優しげな陽だまり。訪れた日には若い母親に連れられてきた小さなお子さんが石畳の上で水遊びをしていました。沢遊びを普通の住宅街にある公園でできるのは羨ましい限りです。
キノコの森を映し出す高架橋は土木建築の最優秀作品
陣ケ下渓谷にまつわる注目点が、先ほどの入口からすぐの遊歩道にありました。高架橋です。とてもオシャレな高架橋は2003年の土木学会デザイン賞で最優秀賞を受賞したというアーティスティックなもの。 このスマートでエレガントな高架橋はPC中空床版連続ラーメン橋という形式を採用しているそうです。オバQの現役世代なもので、ラーメンというと小池さんと脊髄反射してしまいますが、そのすする拉麺のラーメンではなく、ドイツ語で骨組みを意味する言葉だそうです。 高架底面から柔らかに曲線を描きながらストンと落ちる高架橋はまるでキノコのように見えます。この高架橋の構造はピルツ構造といい、これもドイツ語でキノコの意味だそうです。さながら巨大なエリンギの森かと思うほどに上下2車線の高架道路から生えています。 うっとりするほど美しい柱表面には木目の加工が施されています。聞けば、木の型を作ってコンクリートを流し込んだとか。建築デザインは大野美代子さんという建築家にして橋梁デザイナー。女性らしい設計思想が、公園のイメージとシンクロしていますね。 反対側にある西原口には有料駐車場とトイレが完備されていますので、まだ未踏の方は一度、渓谷探訪に訪れてみてはいかがでしょうか。公園内にはベンチやテーブルを設置したウッドデッキもあります。アップダウンのある園内をくまなく散策しても1時間少々と適度な運動になります。
ソトラバ編集部