パレスチナ支援機関への資金拠出停止は「ガザ市民への死刑宣告」 食料や医療の「生命線」が断ち切られる恐れ、日本への失望も
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のスタッフ12人がイスラム組織ハマスのイスラエル奇襲に関与した疑惑を受け、日本や欧米諸国を含む15カ国以上が資金拠出の一時停止を発表した。UNRWAの管理強化や適切な対応を求めるためだが、イスラエル軍が地上侵攻するパレスチナ自治区ガザでは、170万人が自宅を追われUNRWAの支援に依存せざるを得ないのが実態だ。拠出停止が長期化すれば、人道危機の深刻化が懸念され、ガザ市民からはこれまで支援してきた日本に対する失望の声も上がる。(共同通信エルサレム支局・平野雄吾、ウィーン支局・岡田隆司) 歴史が生んだ「世紀の難問」…イスラエル、パレスチナの争いはなぜ始まった 共同通信記者が基礎から解説
▽「飢え死にする」 避難者の大多数が押し寄せるガザ南部ラファ。UNRWA運営の学校には、色とりどりの洗濯物が干され、中庭には、校舎に入りきらない避難者がテントを張っている。 「UNRWAの支援がなくなれば、多くの住民が飢え死にする」。1月下旬、家族12人と避難生活を送るハニ・サレハさん(66)が共同通信ガザ通信員ハッサン・エスドゥーディーの取材に嘆いた。 「週に2回、ツナ缶や豆などの食料が配給される。現状でも足りないのに、なくなったらどうなるのか…」 ガザではこれまでにも、ハマスとイスラエル軍の戦闘が繰り返され、そのたびに多数の市民が死亡、住宅の破壊も相次ぐ。失業率は高く、生活に希望を失う若者たちはガザを離れ、海外での生活を夢見るケースも多い。 ハマスが武力で制圧、実効支配を始めた2007年以降、ガザはイスラエルの境界封鎖下に置かれる。域外との物資搬出入や人の往来は制限され、昨年10月7日に始まった今回の戦闘前から「天井のない監獄」と呼ばれてきた。現在のイスラエル軍とハマスの戦闘は、そんなガザ市民の苦境に拍車をかける。UNRWAは現在、運営する学校を中心に150カ所の避難所を開設、60万人以上の市民を受け入れる。食料や毛布、衛生用品を提供し、各避難所に医師らも派遣する。人道危機の深刻化するガザで、「現場で基本的サービスを担う最も重要な組織」(国連関係者)だ。