パレスチナ支援機関への資金拠出停止は「ガザ市民への死刑宣告」 食料や医療の「生命線」が断ち切られる恐れ、日本への失望も
「UNRWAへの資金拠出の停止はガザ市民への死刑宣告に等しい」 ラファに避難するフサム・アブハマドさん(48)は拠出停止の動きに憎しみを露わにした。 ▽UNRWAは難民にとって「生命線」 米紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラエルはUNRWAの学校職員らが奇襲や女性誘拐、弾薬提供などに関わったとみている。国連は関与したとされるスタッフを解雇し、調査に乗り出した。イスラエルを支援するバイデン米政権が奇襲疑惑を理由に1月26日に拠出の一時停止を発表、日本やドイツ、フランス、イタリア、スイス、オーストラリアなども米国に追随した。 ある外交筋は、一時停止について「簡単な決定ではなかった」と説明する。「特に戦闘中に(UNRWAが)パレスチナ人の生活のために果たす重要な役割をよく認識している」としつつ、その上で疑惑について「深刻」で解明が必要だと強調した。別の外交筋も、UNRWAが長年にわたりパレスチナ人に対して果たしてきた仕事の重要性を理解しており、自身の国は多額を拠出していると指摘。一時停止については「ほかの拠出国と協調した」対応で「イスラエル攻撃に使われていないことを確実にするために必要だ」と主張した。
一方、ノルウェーのアイデ外相は1月31日、資金拠出停止がガザの人道状況に「幅広い影響」を与えるとロイター通信に述べ、停止を発表した国に対して再考を促している。アイデ氏は、ガザで人道支援に携わるUNRWAは難民にとって「生命線」で、これまで以上に国際的な援助が必要だと主張。「連帯責任を避けるため、個人の行為とUNRWAの活動を区別する必要がある」と訴えた。 ▽イスラエル、UNRWA解体要求 イスラエル政府は1月下旬にUNRWAスタッフによる奇襲攻撃への関与疑惑を発表した後も、UNRWA非難を続ける。ネタニヤフ首相は1月31日、東欧など8カ国の国連大使とエルサレムで会談、「国際社会はUNRWAの役割が終わったと認識すべきだ」と述べ、解体する必要があると強調した。以前からイスラエルには、「UNRWAは反ユダヤ主義的だ」と非難する勢力がおり、今回の奇襲関与疑惑を契機にUNRWA解体に向けた国際世論を誘導しようとの思惑も指摘される。そもそも、イスラエル政府がバイデン米政権に奇襲関与疑惑を理由にUNRWAへの資金拠出の一時停止を促したと伝えられる。