パレスチナ支援機関への資金拠出停止は「ガザ市民への死刑宣告」 食料や医療の「生命線」が断ち切られる恐れ、日本への失望も
一方、カナダ・クイーンズ大のアルディ・イムセイス助教(国際法)は「イスラエルの中には誤解している人もいるが、UNRWAを解体しても、国際法で保護されているパレスチナ難民の帰還権が消滅することはない。UNRWAを代替できる機関はほかにはどこにもない」と指摘している。 ハマスの奇襲攻撃から始まったガザ戦闘はUNRWAの議論にまで発展、言い換えれば、難民帰還権というパレスチナ問題の根源的な問題を浮き彫りにする事態をも引き起こしている。 ▽日本にはこれまで感謝していたが… 拠出金の一時停止を巡り、ガザ住民からは憎しみの声が上がる。 「仮に約10人が奇襲に関与していたとして、なぜパレスチナ人全体が罰を受けるのか」 ラファのアクラム・バハアさん(37)は、拠出停止はガザ全体への「集団的懲罰だ」と憤った。「戦闘開始前も後もガザでUNRWAが果たしている役割は大きい。その存在がなくなれば、大災害となるだろう」
日本による支援をきちんと理解しているガザ市民も憤る。フサム・アブハマドさん(48)は「日本にはこれまでの支援に感謝していたが、停止と聞いて失望した。結局日本は米国に追随するだけなのか。日本に対する見方が変わった」と話した。 国際司法裁判所(ICJ、本部オランダ・ハーグ)は1月26日、ガザ戦闘を巡り、イスラエルに対しジェノサイド(民族大量虐殺)上の義務を順守し、ガザへの人道支援物資搬入を強化するよう仮処分命令を出した。米国によるUNRWA職員の奇襲関与疑惑が発表されたのも同じ日で、意図的な発表だとの指摘もある。 前述のイムセイス教授は「メディアの注意をイスラエル批判からそらすためにあえて、ICJの仮処分命令の直後に発表したのだろう」とみる。 「人道支援を増やすように命じられた直後に、各国が人道支援機関への拠出停止を発表するのはナンセンスで、まるでジョージ・オーウェル的世界(ディストピア=暗黒社会)だ」
国連のアルバネーゼ特別報告者(パレスチナ自治区の人権担当)はICJ仮処分命令に触れ、「停止の動きはジェノサイド(民族大量虐殺)条約上の義務違反に当たる可能性がある」と指摘している。