パレスチナ支援機関への資金拠出停止は「ガザ市民への死刑宣告」 食料や医療の「生命線」が断ち切られる恐れ、日本への失望も
UNRWAは1949年12月の国連総会決議に基づき設立され、1950年から活動を始めた。1948年のイスラエル建国に伴い、自宅を追われた70万人のアラブ系難民(パレスチナ難民)の支援が任務で、ヨルダンやシリア、レバノン、ヨルダン川西岸、ガザ地区で教育や医療を提供、日本政府は1953年からUNRWAへの拠出を始めた。2022年の拠出額は約3千万ドル(約44億円)で、米国やドイツ、EU、スウェーデン、ノルウェーに次ぐ6位となっている。パレスチナ難民の数は増え続け、現在では約590万人が登録し、UNRWA職員として約2万人が教師、約3万人が医療関係の仕事に従事する。UNRWAは国連の中で最多職員数を誇る機関となっている。 UNRWA設立に先立つ1948年12月、国連総会はパレスチナ難民の故郷帰還権を認める決議案を採択した。イスラエル軍、あるいは建国前のユダヤ系民兵組織に武力で自宅や財産を奪われ難民になったパレスチナ人に対して、現在はイスラエル領となった故郷への帰還、もしくは金銭的補償をうたった。国連総会は1949年5月、イスラエルの国連加盟を認める決議案を採択したが、その際の討議で、イスラエルのアバ・エバン国連代表(当時)はパレスチナ難民の帰還権を認める前年の総会決議を順守すると誓っている。
だが、イスラエルはパレスチナ難民の帰還問題を事実上放置してきた。現在イスラエル領となったパレスチナ人の故郷に大量の難民が帰還すれば混乱が生じる上、人口構成上も「ユダヤ人国家」を保てなくなる恐れがあるためだ。故郷帰還権を主張するパレスチナ難民を支援するUNRWAは「難民帰還権の象徴的な存在」(国連関係者)で、対パレスチナ強硬派の右派や極右勢力が力を持つイスラエル国内では近年、特に批判の対象となっている。 イスラエルのシンクタンク「ミスガブ国家安全保障・シオニズム戦略研究所」のアディ・シュバルツ氏はこう主張する。 「UNRWAが存在するせいで、パレスチナ難民はイスラエル領となった故郷への帰還という夢を見続けることができ、パレスチナ問題の解決を不可能にしている。パレスチナ難民は75年もパレスチナに暮らしており、もはや難民ではない。資金拠出の停止は正しい方向で、資金がなくなれば、自然と消滅する。UNRWAは解体すべきだ」