エンタメ大国・韓国発AIオーディオ企業「Supertone」の実力 日本市場をいかにして攻略するか?
未来のAI音声データ
技術があっても、それをマネタイズしなければ「宝の持ち腐れ」になる。収益化としてはShiftやPlayのようなプロダクトのサブスク、クライアントの依頼に合わせた声のデザイン、外部アプリケーションと連動させるソリューションなどを考えているという。顧客対象は「音楽、ゲーム、ネット配信もそうですし、病院、観光、広告、銀行なども対象です」と幅広い。 「病院? と思うでしょうが、院内ではそれなりにアナウンスが流れています。銀行もそうですね」と話す。確かに銀行の窓口で、手元にある番号札が呼ばれるときの音は、いかにもコンピュータ音という感じだが、それが自然な声として流れてくるというわけだ。博物館であれば、展示物について音声ガイドを必要とするとき、Playを使えば一気に複数の言語に対応できる。この技術が一般化したあかつきには、どんな世界が待っているのか。Kyo Sun Choo氏は次のような事例をあげてくれた。 「葬儀屋さんと話す機会がありました。亡くなった方の声を復元して、遺言や葬儀で使いたいという相談がありました。声のサンプルは提供できると言っていました。ほかには、『ボイスバンク』のようなものを作り、家族の声をデータに残しておき、聞きたい時に自分でせりふを制作して、家族の声を聞くというものです。私たちは、音の所有者の権利を尊重し、AIの倫理原則に沿った形で、これらの要望やニーズにも向き合っていきたいと考えています」 以前、アーティストのYOSHIKI にAI YOSHIKIについてインタビューした際「僕が亡くなった後、AI YOSHIKIが生き続けるのは、ファンにとってはうれしいことなのかもしれません」と話していた。アーティストよりも肉親の声は当人にとって唯一無二の価値を持つものだからこそ、需要があると考えられる。 現状、ShiftなどのプロダクトはPC向けとなっているので、いずれ持ち運びできるスマートフォンなどでも快適に使用できるようにすることが「次のミッションで、ロードマップに入っている」という。 「翻訳機能のリクエストもかなり多いので、今すぐ対応するのは難しいですが、こちらも視野に入れて開発したいと考えています」