旧ジャニーズと松本人志氏の問題でメディアは変わるべき 人権指針はお題目ではない
また、旧ジャニーズ問題との関係でも「日本のメディア企業は何十年も隠蔽に関与」などとしている。 報告書の原文を読むと、「主要な放送局や出版社、大手広告会社はビジネス関係において影響力を行使することで人権危機に対処したり、性加害を防止したりすることによって人権を尊重しようとする責任を果たしていません」と指摘されている。つまり、日本のメディアは”Human Rights Violators(人権侵害者)"と見なされたのだ。だが、これについて日本のメディア自身で報じられていることを、これまでのところ私は確認できていない。 すべての作業部会による国別報告書を読めたわけではないが、基本的にメディアには”Human Rights Deffenders”としての役割が期待されている。つまり、被害者の代わりに声を上げる者、人権を護(まも)る者、人権の守護者であるという。 この違いを、日本のメディアはどこまで自覚しているのだろうか?もし、あなたが放送関係者に知り合いがいたら、一度はたずねたことはないだろうか?ニュースで旧ジャニーズ問題を扱いながら、バラエティー番組では、何もなかったように旧ジャニーズタレントを起用しているのではないかと。 放送関係者は、ニュースなどを扱う報道部と、バラエティーなどを扱う制作部・情報部、また、スポンサーなどと向き合う営業部などは同じ会社でも「違う」と説明するのだが、この内輪の論理は対外的には通用しない。 なぜならば、外から見たら一つの会社であるからだ。その会社が、人権方針を出しているのだとすると、すべての業務、すべての番組に人権方針がいきわたっていないといけない。そして、ながらくそのような組織にいるために、経営層も、番組審議会でさえも、報道と制作は違うという内輪の論理に納得する部分があるのだ。ひとつの組織として負っている人権尊重義務は、軽くない。 それで困るのは、スポンサー企業と向き合っている営業だろう。 また、年末にはお笑い番組の話題も盛んになる。今回は、松本人志氏に関する報道があわせてSNSなどでも取りざたされているが、一部報道によると、吉本興業が松本氏の復帰のために、各局を行脚しているとあった。 旧ジャニーズと同様に、この問題はさまざまな人権問題と関連している。そして、吉本興業も株式会社として人権指針を持っている。もし、松本氏が復帰するのだとすれば、吉本興業は自社の人権指針に抵触していないことを踏まえ営業し、各局は自社の人権指針に基づいて出演をさせるかどうかを、視聴者とスポンサー企業に説明しなければならない。