旧ジャニーズと松本人志氏の問題でメディアは変わるべき 人権指針はお題目ではない
また、NHKの出演者に対する人権尊重のガイドラインには、日付が入っていないのが気になるが、おそらく他の多くの放送局などが、いわゆる旧ジャニーズ問題が注目を集めてから人権方針が策定されたことに鑑みると、同じ時期ではないかと考えられる。なお、TBSグループ人権方針は2023年3月に策定され、さらには旧ジャニーズ問題が英BBCドキュメンタリーで取り上げられて大きく動いた時期に改定されている。ほかの主要な放送各社が策定した人権方針とその時期は以下の通り。 テレビ朝日グループ人権方針(2024年2月に発表) フジ・メディア・ホールディングス グループ人権方針(2023年11月策定) 日本テレビホールディングス 人権方針(2023年11月策定) テレビ東京グループ人権方針(2023年11月策定) 放送各社がこのような人権方針を策定し、公表した背景には、国連の人権理事会に設置されている「ビジネスと人権」に関する作業部会が、2023年7月~8月にかけて訪日調査を行った際に、旧ジャニーズの問題についても扱ったことが大きく作用している。誤解をしている人も多いようだが、このビジネスと人権作業部会の訪日調査は、旧ジャニーズの問題のために来日したわけではなく、訪日調査が決定していたところに旧ジャニーズ問題が出てきたため、インタビューの対象になったのであるが、メディアはこぞってこの訪日調査のことを「旧ジャニーズ問題」として取り上げた。 2024年5月に、この訪日調査に基づいた報告書が国連人権理事会に提出され、公表された。旧ジャニーズ問題以外にも、さまざまなことが報告されていた。報告書の概要や日本語訳などを独自に提供する「ヒューマンライツ大阪」(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)や人権NPO「ヒューマンライツ・ナウ」の公式サイトによると、メディアとエンターテインメント業界について、アニメ業界の給与の安さや長時間労働、アイドル業界の性暴力、ハラスメントの問題について言及しているが、それに関連して放送局や出版社、大手広告会社に対し、「影響力を行使する人権尊重責任を果たしていない」と指摘している。