トロフィーを抱えて揺らす10秒のための(前編)(Bリーグ・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 中東泰斗)
好きを職業にするのがいいのか悪いのか、いいこともあれば悪いこともあるだろうと思うけれど、仕事を楽しめるかどうかはまた別の話。 白くて手足はすらっと伸びて、飛び跳ねるようにバネバネしくコートを駆け回る中東泰斗はバスケットボールをプレーしている限りにおいていつも楽しいそうで、毎回の試合が楽しみで仕方なさそう。 したがって昨シーズンのセミファイナル、名古屋ダイヤモンドドルフィンズがBリーグ発足以来初めて進出したステージにおいても緊張でガッチガチに固まったりプレッシャーにじんわりと追い詰められて鬱々としたりすることがなく、これまでよりも目標に近づけた楽しさを一層感じる時間であったそうで、それはなににも代え難い稀有な性質。 とりわけのお気に入りはディフェンス。 なんでも相手のエースを「バチーっ!」と止めたときとかにアガるのだそう。 しかもその楽しみはプロになってから覚えたようで、学生まではディフェンスよりオフェンス、だった。 それでも見出されて、求められて、結果を出すうちに、「バチーっ!」と止めてるうちに楽しくなってきちゃった。仕事が好きを生んだ。 僭越ながら個人の感想を述べさせてもらうと、近年の名古屋D(文字数)はファイナルに進んだり優勝したりしてもおかしくない水準だと思う。不運にも絶妙なタイミングで戦力を欠くことがなければ。 なので終盤に勢いのついた昨シーズンはもしやと思ったものだったが、終わってみればセミファイナル敗退。 そのときのことを「すべては1日目の第3クォーターだった」と中東は振り返った。 3点しか取れなかった10分間。いったいなにがあったというのか。 「広島(ドラゴンフライズ)さんはビッグラインナップでスイッチしたりしなかったりとか、すごく考えさせるディフェンスをしてきて、それに困惑してどこで攻めるべきなのかをうまく見つけられなかった。なかなかいいシュートが打てず、相手の(ドウェイン)エバンス選手を止めることができず、どんどん向こうには点を取られ、こっちは点が入らず、悪循環になってたのかな、と思います。結局自分たちの早い展開でやりたかったところを、相手のスイッチだったりチェンジングだったりでペースも遅らされて、このセミファイナルは広島ペースで試合も進んだのかなという印象でした。」 ややこしい守りで相手の歯車を狂わせ、その隙に主導権を握る手法はむしろあなたたちこそが得意とするものであって、それに対する耐性のようなものが日々の練習の積み重ねによって磨かれているのでは、などという率直な疑念が頭をよぎり、でもこれはなんだか批判的で印象が悪い質問かもしれないなあ、と思い直す前にうっかり口をついて出た。