なぜ横浜DeNAの宮崎敏郎はFA権を行使せず異例の6年契約でのチーム残留「生涯ベイスターズ」を決断したのか?
球団の初動も早かった。「確実に3割を打てる三塁手」は、資金力のある球団なら喉から手が出るほど欲しい。フロントサイドは、宮崎が6月にFA権を取得するやいなや、水面下で“魔の手”が伸びる前に残留交渉をスタートさせていたという。 「何度かお話をさせていただき熱意を感じました」 その中で、宮崎の心に響いたのは三原球団代表、そして直接出馬した三浦監督の熱い言葉だった。 「残って欲しい。来年からも一緒に戦おう」 言葉だけではない。フロントは6年契約という異例のオファーで誠意を示した。三浦監督が2003年から6年契約を結んだことがあるが、ベイスターズでは、それ以来の待遇。野手では初だ。 「(6年契約の)お話をいただいたときは、びっくりしました。まさかという思いもありました。勘違いかもしれませんが、必要とされているという気持ちになりました」 現在、32歳の宮崎の6年後は38歳。三浦監督は42歳までプレーしたし、球界最年長野手の中日の福留孝介は来年45歳。選手寿命が延びている現代においては、引退する年ではないが、事実上の生涯ベイスターズと言っていい契約だ。 代表質問で「生涯ベイスターズを決断したことになる?」と聞かれ、「はい」と宮崎は即答した。 「横浜DeNAで最後を迎えて欲しいとの言葉もいただいて、その意味(生涯ベイスターズ)も含まれているのではないかなと思いました」 ベイスターズの顔としての責任感がある。 「自分自身は言葉で引っ張っていく性格ではないので、姿勢や行動、背中で引っ張っていけたらと思っている。チームの勝利に1試合でも多く貢献して、それが積み重なれば結果として出てくる。ファンの熱い声援を力に変えて、少しでも上のステージにいけるように頑張っていきたい」 今季は、打率.301、16本塁打、73打点の成績を残した。3割越えは2年連続で、打点はキャリアハイでオースティンに次ぐチーム2位の数字。5月は15打点、6月は16打点を稼ぎ、7月は、打率.368、得点圏打率.571の勝負強さを見せ、優勝したヤクルトに対しても打率.337、7本塁打とキラーぶりを発揮した。その一方で、4月は打率.274、得点圏打率.200、4併殺とエンジンがかからず、8月も得点圏打率.091とチャンスを潰すシーンも目立った。「1試合でもチームの勝利に貢献したい」というのは、その部分だろう。 「3割を毎年目標にしている。毎年安定した数字を出せるのが一番」 オースティンの残留が濃厚で、ソトも3年契約の2年目。そこに流出が懸念されていた宮崎の残留で、最下位に終わったものの、チーム打率、得点がリーグ2位の強力ベイ打線の布陣を維持したまま来年戦えることになった。今季は外国人の合流の遅れが響いて開幕の2つの引き分けを挟む6連敗で出鼻を挫かれたが、チームにポテンシャルはある。 「勝ちたいというのは選手みんな思っていること」 生涯ベイスターズを決断した宮崎がチーム浮上のカギを握ることになるのかもしれない。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)