《日本版ライドシェアの拡大》やみくもに反対しているだけでは地方の「交通難民問題」は解決できない!
■ 通院や買い物で街に出るだけでも高額なタクシー代がかかる地方部 日本ではドライバーの身辺調査はアメリカよりは格段に厳密になされるので、犯罪についてはそれほど神経質にならなくても大丈夫だろう。しかし、クオリティーの面ではライドシェアがタクシーに置き換わるポジションを得るのは容易ではないだろう。 筆者は体験として二種免のレッスンを受けたことがあるが、路肩へのスムーズな停車、法令上駐停車が可能かどうかの瞬時の判断、狭い路地での運転技術を見るための鋭角クランク等々、言うは易し行うは難しのオンパレード。 ちなみにバスの二種免に至ってはさらに難しく、お客さまが降りやすいよう縁石ギリギリに寄せて停まるのに失敗して発泡スチロール製の縁石を何度も踏み潰したりした。クルマを普通に走らせることができれば不特定多数の人を乗せてもいいというものではないということを痛感した次第だった。 日本版ライドシェアのドライバーの資格は一種免取得後1年以上という一点のみ。ライドシェアを副業にしようというくらいだから、実際には運転が好きで、腕にある程度覚えもあるという人が多数派だろう。だが、前述のように旅客を有償で運ぶクオリティーを維持できるかどうかは未知数。安全・安心という日本のブランドを維持するには、諸外国のライドシェアにはない何らかの策を講じる必要がありそうだ。 だが、問題があるからといって、ライドシェアの拡大を忌避するのが正しい選択ということにはならない。大都市圏ではタクシー不足の解決策として、地方部では公共交通機関崩壊の代替手段として、普及させる意味は大いにある。 特に普及が望まれるのは地方部だ。すでに特例措置として非政府組織や自治体を母体とした一種免による有償旅客輸送が行われているが、交通手段のない人口希薄地帯限定。地方の交通難民問題は実は交通手段のない過疎地ばかりでなく、比較的利便性が高いとされる中核都市にも広がっている。 財政赤字縮小策としてバスが次々に減便・廃止され、ライドシェアも認められていないという現状では、高齢者をはじめ自分でクルマを運転することができない人はタクシーに頼らざるを得ない。 だが、地方は都市部に比べて移動距離が長く、タクシー代が高額になりやすいという問題がある。通院や買い物などでちょっと街に出るだけでもタクシー代が往復5000円、1万円となることも珍しくない。いくら必要性が高いからといって、自分の収入よりも高額な交通費を払うことなどできない。