《日本版ライドシェアの拡大》やみくもに反対しているだけでは地方の「交通難民問題」は解決できない!
■ ライドシェアの本場アメリカでは「重大事案」も発生 日本ではライドシェア解禁が議論されるたびに競合するタクシー業界が徹底抗戦してきたという歴史がある。 「ライドシェア解禁を社会改革のひとつに位置付けるデジタル庁と、タクシー業界側の理論で動く国交省のすり合わせは本当に難しかったはず。 有償旅客運送にまつわる“岩盤規制”に風穴をあけるには、中身がどんなに粗末なものになってもいいから、とにかく一種免(普通自動車第一種免許。自家用車用)のドライバーが有償でお客さまを運べる特例ではない正式な制度を発足させることを最優先させるべきと考えたのでしょう。 もっともライドシェア拡大という話になればタクシー業界が再び抵抗するでしょうから、難しい状況は変わらないと思いますが……」(個人タクシー事業主) 実際、1日当たりの平均稼働数が全国で81.5台というのは深刻化するタクシー不足を補うのには全く貢献しないレベルだ。が、それでも一種免のドライバーが自家用車で有償輸送を行うことができるようになったというのは、一歩前進と言えよう。 この日本版ライドシェアが将来、日本のユーザーがメリットを得られるような形に進化していく可能性はあるのだろうか。法人タクシーの業界団体である「全国ハイヤー・タクシー連合会」のライドシェア全面解禁へのスタンスは、依然として“断固阻止”だ。 これは半分は業界のエゴだが、正当性も半分くらいある。世界最大のライドシェアプラットフォーマーはアメリカの「Uber(ウーバー)」だが、利便性の高さ、多様なニーズへの適応ぶりは確かに目を見張るものがある。 アメリカの空港に降り立つと、大体タクシーのカウンターの近くにあるウーバーの無人カウンターが目に飛び込んでくる。高級車、大衆車、エコカー、乗り合いなど多様なクラスがあり、カウンターのPOPには概算料金が記されている。高級クラスの料金はタクシーよりずっと高く、乗り合いは時間がかかる代わりに極めて安い。アプリで予約をすれば簡単に利用できる。 一方で、強盗や性的暴行、殺人、重大事故などの事案も少なからず発生している。アメリカでもドライバーがライドシェアに登録する際は身元調査が行われることになってはいるが、公共交通機関であるタクシーと比較すると甚だ不徹底という点も事あるごとに指摘されている。 また、商業ドライバーでないため運転のスキルはバラバラで、クオリティーも安定しているとは言い難い。利便性の高さから当たり前のように使われているが、トラブルは決して少なくはないのだ。