この電動化なら炎上せず? エヴァラティ・メルセデス・ベンツSL W113へ試乗 60年代に寄せた走り
1億円近くの大金を準備し電動化する人も
クラシックカーをレストアし、バッテリーEV化する「エレクトロモッド」。中には、50万ポンド(約9600万円)もの大金を準備し、プロへ依頼するカーマニアが存在する。その受け入れ先となっている1社が、英国のエヴァラティだ。 【写真】この電動化なら炎上しない? エヴァラティSL W113 あれもこれもEVに! 斬新なサンダーボールも (137枚) 顧客の多くはアメリカ人で、30%が女性らしい。まだ運転免許を持っていない小さな息子のために、ゼロエミッションの時代に合わせ、手持ちのクラシックカーを電動化したいと考えるオーナーもいるという。 2台目や3台目のエレクトロモッドを、エヴァラティ社へ依頼する人も少なくないとか。驚くのは、筆者だけではないはず。 同社は、グレートブリテン島南中部のオックスフォードシャー州に拠点を置く。3年ほど前に、964型ポルシェ911を電動化して以来、目覚ましい成長を遂げてきた。 これまでに、各種の古いランドローバーの他、フォードGT40やメルセデス・ベンツSLなど多数を手掛けている。技術コンサルティング部門を新規に立ち上げ、新たな従業員を雇い続けている。 創業者の1人で現CEOのジャスティン・ラニー氏は、スタッフの過去の経歴を誇らしげに話す。マクラーレンやベントレー、リマック、シンガーといったメーカーから、転職した人もいるそうだ。「優秀なスタッフが集まってきます。探す必要はありません」
最高出力は304ps 航続距離は最長321km
素晴らしい内燃エンジンを降ろすことに、反対するクルマ好きは少なくないだろう。実際、911やGT40のエレクトロモッドがSNSに掲載されると、賛否両論が渦巻いた。しかしW113型のSL、通称パゴダルーフなら、炎上することはないと思う。 このメルセデス・ベンツは、聞き惚れるサウンドを魅力の1つとはしてこなかった。また、フロントエンジン・リアドライブというレイアウトは、同社の電動化技術を活かすのに絶好のものでもある。 直列6気筒エンジンとトランスミッションを外すことで残る空間には、大きな可能性がある。駆動用モーターは、ロータス・エヴァイヤも採用する、ヘリックス社製。駆動用バッテリーの容量は2種類から選べ、航続距離は257kmか321kmを得られる。 ツインモーターで、最高出力はオリジナルの約2倍となる304ps。最大トルクは30.4kg-mへ上昇する。仕様にも依るが、0-100km/h加速は7.0秒でこなせるそうだ。 前後の重量配分はオリジナルに近く、車重は1.7t以下に収まるとのこと。リミテッドスリップ・デフに回生ブレーキ、パワーステアリングなどが組まれ、従来の魅力を保ちながら、現代的な運転体験をもたらす。 車高調整可能なサスペンションは、KW社製。ドライブモードが実装され、必要に応じて引き締めることも可能。良く効くエアコンと、上質なレザー内装は標準だ。 果たして、このエレクトロモッドの金額は33万ポンド(約6336万円)から。ベース車両は、別途用意する必要がある。