イエスと言わせる「言葉のレシピ」 佐々木圭一さんに聞く
── 想像が付かないです。 佐々木:なんて言ったかというと、「私が怖いから一緒に手をつないで渡ってくれない?」っていうふうに、子供を大人扱いしたんですって。そしたら分かった、と。「僕がつないでってあげるよ」って言って、手をつないで渡ったと。子供としてもすごいうれしかったし、連れていった大人についても手をつないで安心したって話があって、この話ってすごい記憶に残るじゃないですか。なるほど、みたいな。こうやって相手の好きなことっていうところで、その子供は子供扱いされるのが嫌だけど、大人扱いされるのはうれしいからそういうところで伝えればいいんだっていうところで記憶に残るっていうようなエピソードが結構連続で入っていて、それを記憶の中に入れていくっていうのを目指して作っているんですよね。
訓練とレシピを実践してみた成功事例は?
──まさにそういう訓練とレシピがあって、初めて上手なコミュニケーションが取れるようになると。すでに『伝え方が9割』の1のほうに出てると思うんですが、実際にそれを実践してみて、業績が上がったとか社内のコミュニケーションが活発になったとか、そういう事例とかありますか。 佐々木:あって、これも出版、1を出版した直後に講演をさせていただいたときにその話を伺って、僕も感動したんですけど、この本の中に、2で書かせていただいてるんですけど。カーナビを作っている会社があって、下請けの企業ですよ、と。で、毎年そのメーカーから値引きをしてくださいっていうふうに言われる。でもあんまり値引きされちゃうと、本当に純利益が減ってしまって困ってると。毎回提案しにいって、高価格でハイスペックのモデル、作りませんかっていう話をしてきたんだけど「それは要らない」っていうふうにメーカーに言われて続けたと。で、社長、困っちゃって。あるとき、『伝え方が9割』の1のほうを見て、それをそのまま使ってみようと思ったんですって。ある言い方をしたら、「いいね」っていうふうに言ってくれたんだって。なんて言ったと思います? ── なんておっしゃったのですか。 佐々木:「御社のフラッグシップモデルを作りませんか」っていうふうに言ったんですね。つまり、どういうことかというと、製品はたくさんある。カーナビはたくさんあるんだけど、その中で一番真ん中となる、御社の代表となるようなそんな商品を作りませんかっていうふうに言ったら、なるほど、と。そういう提案を待ってたんです、って言われたんですって。会社としても、確かにたくさんあるけど、どれが一番自分のところの最上位機種で代表としてるものかっていうものはなかったし、そういうものを持っておいたほうが会社としても良かったなっていうふうに思ったと。 これ、ポイントは、言い方を単に変えたっていうだけじゃなくて、会社のことをいっぱい想像していろいろ話を伺ったり、製品っていうものを調べた上でその企業にとって何が一番大切なのかっていうことを社長は考えた上で提案したからメーカーとしてもいいね、っていうふうに言ってくれた。ただ、結果だけ見ると同じ物なんですよね。高価格でハイスペックモデル。もともとそれを提案してたんですけど、最終的に作ったものそれなんですよ。同じものを、なんて言うんでしょう。ちょっと引いてみると、提案してるかもしれないですけど、でも伝え方。あと、相手のことを想像した上で伝えたことによってメーカーも喜んだし、自分としてもすごい助かったっていう話を伺いました。