選考委員全員に「これしかない」と言わしめた一作で薬剤師の愛野史香がデビュー 応募のきっかけや創作秘話を語る(レビュー)
――お仕事は続けられているそうですが、執筆は週末が中心ですか? 愛野 そうですね。あとは通勤時間とか。スマホで書いているので、どこでも書けるといえば書けます。 今村 スマホで書いてんの? パソコンのほうが速いやろ! 愛野 私、フリック入力のほうが速いんです。小説を書くようになった頃、病院に自分のPCが持ち込めなかったので書くにはスマホしかなかったというのもあるかもしれません。 今村 令和っぽいわ(笑)。 ――最後に、今後の抱負などお聞かせください。 愛野 私は書いてきた量が圧倒的に少ないと思っています。長編二作目と言いましたが、最初の作品は長いだけでまとめられていなかった。とにかく数を書きたいと思っています。今は、次作をきちんと書き切って作品にしていきたいです。 今村 僕も言われてきたことやけど、次の一作が今の自分を超えられるかやと思う。で、その判断をするのは他者ではなく自分。自分がそう思えるかどうかが重要で、僕もそこは常に意識しながら書いています。そして、その闘いはもう始まっている。春樹賞の名に恥じぬよう頑張ってください。 愛野 はい、ありがとうございます。 【著者紹介】 愛野史香(あいの・ふみか) 1992年佐賀県嬉野市生まれ・在住。福岡大学薬学部を卒業し、現在薬剤師として勤務している。2024年、「真令和復元図」(応募時タイトル、『あの日の風を描く』に改題)にて第16回角川春樹小説賞を受賞。 【聞き手紹介】 今村翔吾(いまむら・しょうご) 1984年京都府生まれ。デビュー作『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』から始まったシリーズが大人気作となる。2018年「童神」で第10回角川春樹小説賞を、選考委員の満場一致で受賞。『童の神』と改題の上刊行されて、第160回直木賞候補に。2020年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞、『じんかん』で第163回直木賞候補となり、同年第11回山田風太郎賞を受賞。2022年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。ほかの著書に「くらまし屋稼業」「イクサガミ」シリーズ、『茜唄(上・下)』『ひゃっか!』などがある。 [レビュアー]角川春樹事務所 石井美由貴 写真:島袋智子 協力:角川春樹事務所 角川春樹事務所 ランティエ Book Bang編集部 新潮社
新潮社