2,000万円のはずが…定年直前にまさかの“退職金0円”の悲劇。月収40万円の勤続37年・59歳大卒会社員「えっ、さすがになにかの間違いでは」【社労士の助言】
定年前の突然の悲劇…会社が倒産で「退職金0円」
ある日、いつもどおりに出社すると、会社入口に人だかりが……かきわけて入口の張り紙を見ると「会社が倒産した」と記載されていました。「えぇっ、そんなばかな……さすがになにかの間違いでは」と半信半疑のなかドクドクと鼓動が早まるのを感じました。それから、顧問弁護士と名乗る人から説明を受け、ようやく深刻な事態だと把握しました。 Aさんは60歳定年後、再雇用で65歳まで働くつもりでした。65歳の年金を受け取るまでの5年間が空白となってしまいます。60歳で再就職先があるか不安は隠せません。それどころか、退職金はどうなるのだろうか。退職金2,000万円のために、定年まで頑張ってきたのにまさかの0(ゼロ)円!? 慌ててインターネットで調べてみると、退職金の支払いに関する規定が雇用契約や就業規則、退職金規定などに記載されており、会社と労働者とのあいだで退職金の支払いが合意されている場合、退職金が支給されるとありホッとしました。しかし、それはほんのつかの間……。 退職金は会社が倒産したとしても受け取る権利は失われることはありませんが、倒産した会社に支払う余力があるかどうかです。倒産するぐらいだから余力なんてないのでは?とAさんを大きな不安が包みます。
途方に暮れるAさんに救いの手はあるか
Aさんが計画していた退職金2,000万円の使い道は下記のとおりです。 ・700万円で住宅ローンを完済 ・妻と自分で100万円を退職祝に ・200万円は普通預金へ(いざというときの備え) ・残り1,000万円をNISAと貯蓄型保険や退職金定期預金等にあてる このように考え、大変楽しみにしていたのです。 定年退職を目前にまさかの倒産。Aさんは途方に暮れ、定年後に計画していたライフプランはガラガラと崩れ落ち、こんなはずではなかったと絶望し、目の前が真っ暗です。 会社側からの説明では、従業員は全員解雇となるようです。離職票を受け取り、ハローワークで求職の申し込みをし、失業手当を受けることで、当面の生活はなんとかなりそうですが、60歳以降の仕事を探さなければなりません。 今後の生活が脅かされる結果に戸惑い、学生時代の友人に相談すると、従業員を救済するために、国の制度として、政府が会社に代わって未払賃金と退職金の一部を立替払いする制度があるとのこと(独立行政法人労働者健康安全機構の未払賃金立替制度)。 未払賃金の立替払制度は、労働者とその家族の生活の安定を図る国のセーフティーネットとして、企業が倒産した場合に、賃金の一部を国が立て替えて支払う制度で、労働基準監督署と独立行政法人労働者健康安全機構が制度を実施しています。 ただし、この制度には要件と上限金額があり、支払われる金額は未払いの賃金を含めた額の8割となっています。退職金の支払いが全額保証される制度ではないのです。また、退職日の年齢によっても限度額があります。45歳以上のAさんは、受け取れたとしても立替払の上限である296万円(45歳以上)です。 また、事業主が、中小企業退職金共済制度を利用している場合は、会社に退職金を支払う余力がなくても、退職金を受け取れます。中小企業退職金共済制度とは、事業主が掛け金を納付することで、従業員が退職したときに独立行政法人勤労者退職金共済機構から従業員に退職金が直接支払われる制度です。
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