混同すると逆効果の恐れも? 知っておくべき「1on1」と「コーチング」の違いとは
仕事の「土台」に当たる部分は、ほぼ間違いなく先輩世代の方が身についている。1on1は、上司部下ともにそのことを認識した上で行われる。だからこそ、ティーチングが重要な要素になるし、部下側も上司の経験談を問うことができる。 その土台がほぼ完成してくると、いよいよ上司や先輩が持っていない部下なりの「独自性」が重要になる。 昨今の企業経営者と話す限り、多くの経営者はいち早く、そして一人でも多くこの領域に導きたいと願っているようだ。そうなることで、より組織への貢献度は高くなるし、特に横断型プロジェクトなどでは力を発揮するようになるからだ。 「基本が身についてくると、だんだん私の言うことを聞いてくれなくなるんですけどね」なんて言いながら、上司はちょっと嬉しそうだったりする。 「土台」形成のためのティーチングと、「独自性」形成のためのコーチング。 この2つの育成要素が混在しているのが1on1と言える。 相違点5:評価の必要性 最後はやはりこれだろう。1on1には、雇用契約に基づいた評価が伴う、という点だ。 コーチングは、自ら目標を設定し、それを達成しようとする対象者と、客観的立場から対象者らを支援するコーチとの関係性によって構成される。他方、1on1は、同一組織によって雇われた2者が、その組織運営の一環として行われる。 そして、この文脈において、最もクリティカルに効いてくるのが「評価」だ。 上司や先輩は、1on1の過程において、部下や後輩の中長期的な成長支援を重視しつつ、目の前のタスクに対する評価や指導を行う必要がある。これは単に、1on1が中長期と短期の両方を同時に扱う難易度を指摘するものではない。 被雇用者は、業務時間内に行う職務を通して、組織の利益や生産性の向上に貢献しなければならない。上司らは、その視点から部下らを指導・評価することもまた、彼らの職務である。原則として、学校の部活動のように、自主的な活動を前提としていないのだ。 「〇〇したい」という人を支援するコーチングと、「〇〇しなければならない」という状態を管理する1on1。この違いは決定的とも言える。 部下らから見れば、対話の対岸にいるのは「味方」である以前に「評価者」でもあるのだ。
金間 大介