混同すると逆効果の恐れも? 知っておくべき「1on1」と「コーチング」の違いとは
これまで観察してきた限り、ちょっと元気のない程度の人がカウンセリングを受けたとしても、「うんうん、仕事、つらいんですね。人間関係、大変ですよね。わかります。悩んでいるのはあなたひとりではないですよ。話してくれてありがとう」、というやり取りが中心になる。 つまり、まずは話してもらう、ということが目的になる(カウンセラーの皆さん、詳細をはしょり過ぎてごめんなさい)。 そう考えると、1on1は、コーチングにもカウンセリングにもない、独自の領域を切り開こうとしている。 相違点2:優先順位 先に、コーチングの目的は、「対象者が自分自身の強みや課題を認識し、自ら成長の機会を見つけること」と述べた。また、この過程においては、短期的に成果をあげられなくなることが黙認されることもある、とも書いた。 企業における1on1では、成長>成果の優先順位をそのままインストールするわけにはいかない。コーチングのコーチは支援者、1on1の面談者は上司だ。立場が違う。上司が部下に「結果は重要ではない」なんて、そうそう言えることじゃない。やや極端ではあるが、上司にとっては成果>成長なのだ。 また、コーチがしているのは支援・サポートであり、上司がしているのはマネジメントだ。コーチはほぼ目の前の対象者のことに集中できるが、上司は部下全員に気を配らなければならない。 マネジメントとは調整であり、調整はコーチングの中ではほとんど登場しない。マネジメントでは、あっちを立てればこっちが立たず、なんて日常茶飯事だ。一人に気を使うより、組織全体を考えなければならないことは山ほどある。 そう考えると、コーチングと1on1は、その前提がまったく異なることがわかる。 相違点3:ティーチングの有無 ひと言で言えば、「コーチングは教えない。上司は教えないと話にならない」。 図表3-1に掲載しながら、ここまでほとんどティーチングについて論じてこなかった。コーチは、コーチングの専門家であって、対象としている行為の専門家かどうかは別だ。したがって、原則として、細かなティーチングはしない場合が多い。 この点、日本では事実上、2通りのコーチが存在している。1つはこれまで論じてきたコーチングの専門家。もう1つはティーチングを主とするコーチだ。