混同すると逆効果の恐れも? 知っておくべき「1on1」と「コーチング」の違いとは
後者の場合で最もわかりやすい例は、プロ野球のコーチかもしれない。 例えば、2023年の北海道日本ハムファイターズには、新庄剛志(しんじょうつよし)監督のほか、投手コーチ、打撃コーチなど、1軍8人、2軍8人の合計16人のコーチが在籍している。彼らの仕事は、自分が専門とする行為に関するあらゆる指導だ。むろん、そこには技術的な要素もメンタル的な要素も含む。 時間をかけていろんな業界を調べてみたが、日本のコーチのほとんどは、この後者のパターンに属する。 調査研究する過程で触れた種々の論説によると、この「専門家がコーチをする」パターンには、功績と罪過の両面があるようだ。 「名選手必ずしも名監督にあらず」という言葉の通り、あることに詳しくなると、どうしてもその点についてこだわりを持ったり、必要以上の質を求めたりしたくなる。よって「客観視するなら、隣の分野から見るくらいがちょうどいい」という言い方もよく聞く。 逆に専門家の教えが効果的なのは、基礎を習得するときだ。「対象者自らが目標を設定し・・・」といったことも大事だが、基礎ができないのでは話にならない。 この点、企業の業務に鑑みても、まず必要なのは、厳密な意味でのコーチングではなく、ティーチングだ。 (本書も含めて)ことさら「正解の見えない時代」であることが強調されがちだが、それは高付加価値化あるいは差別化された領域の話であって、その仕事の「土台」には社内あるいは業界内で共通した「正しいこと」が当然存在する。 例えば付加価値や差別化をメインで扱うコンサルティングファームでも、入社後、まず徹底的に叩きこまれるのは秘密保持義務だ。そんなところで主体的にリスクをとり、チャレンジ精神を発揮してもらっても困る。 1on1においても、この「土台」がしっかりできているかを確認する必要がある。 相違点4:代替可能性 第2、第3の相違点と関連するが、コーチは現役選手ではない。イチローさんのように、「選手兼コーチ」みたいなスーパーマンはたまにいるが、原則は違う。 この点の何がそんなに大きく違うのかというと、代替可能性だ。基本的に、上司や先輩は、部下や後輩に代わって業務をやろうと思えばできる。コーチングに、それはない。