フォルクスワーゲンID7 詳細データテスト クラス屈指の広さと快適さ 適度な走り 質感は価格相応
内装 ★★★★★★★★★☆
乗り込んでの第一印象は、地味なクルマだということだ。15インチのフローティングディスプレイとダッシュボードに埋め込まれたデジタルメーターは、ちょっとテスラ・モデル3を思わせるが、あまり質素すぎない程度の見慣れた雰囲気や温かみもある。エルゴノミクスはおおむね上々。ドライビングポジションは高めで使いやすく、シートはソフトでサポート性に優れ、スペースも広い。レッグルームでこれに勝るライバルはあるものの、ヘッドルームの広さもあわせ持つものはない。 大きなクォーターウインドウとパノラミックルーフは、リムジンのようなゆったり感を強調。さらにそれを増す細いAピラーは、駐車時の視認性向上にも寄与する。 オプションのエルゴアクティブシートについても言及しておく必要がある。豪華なベロア張りのそれはじつにすばらしく、マッサージ機能やヒーターとベンチレーター、そしていつまで乗っても快適な形状を備えている。長距離を走れるEVにはふさわしく、必須とも言えるアイテムだ。 また、タッチディスプレイの機能性も改善された。音量と温度は相変わらずタッチ式スライダーで調整するが、温度にはバックライトが加わった。 532Lの荷室容量はクラストップレベルだが、充電ケーブルの収納に便利なフロントの積載スペースはない。広くスクエアな開口部とフラットにフォールドできる後席は、荷室の使い勝手を高めている。 弱点を挙げるとすれば、マテリアルの質感だろう。大きくなって、オプションを満載したゴルフに乗っているような気分になることもしばしばだ。もっとも、BMW i5やメルセデス・ベンツEQEのようなレベルを望まなければ満足できる。
走り ★★★★★★★★☆☆
大型サルーンのパフォーマンスに関して、疑問となるのは、単にどれくらいあるのかではなく、どれだけ苦労なく使えるのかだ。ID7の場合、数値的にはなかなかのものだ。55.6kg-mというトルクは、フェートンに積まれた6.0LのW12より0.6kg-m低いだけだ。しかも、2172kgの車両重量は、かつての12気筒サルーンより250kgほど軽い。トンあたり25.6kg-mはバカにしたものではない。最新のポルシェ・カイエンのV6モデルをも凌ぐのだ。 法定速度まで音もなく到達するのも驚くことではない。実際、中速域の加速はみごとだ。48-113km/hは5.1秒で、よりパワフルだがトルクは低いBMW i5 eドライブ40より0.7秒遅いだけだ。 スロットルのレスポンスは実用的な調整が効く。コンフォートモードでは、パワフルだがゆったりしたガソリンエンジンのような感じ。対するスポーツモードでは、精密でばらつきのないデリバリーを見せる。 いっぽうで、フォルクスワーゲンはコースティングからワンペダル運転まで切り替えできるような回生ブレーキのコントロールを用意していない。可能なのは、コーナーやジャンクションの手前で効きすぎる傾向を抑えること。また、コラムレバーのシフトセレクターでBモードを選ぶと、効きを強めることもできる。 ブレーキペダルの不自然なフィーリングも増してしまうが、制動力には問題ない。113km/hからの停止は、小型スポーツセダン並みだ。