「次世代通信」商機狙う、フジクラ・ヨコオ…電子部品メーカーが製品開発加速
部品メーカー各社が次世代通信規格の浸透を商機として関連部品の開発に注力する。大容量のデータを低遅延・高速で伝送できる第5世代通信(5G)。総務省によると5G人口カバー率が100%に近づいたといい普及が加速する。ただ長距離伝送の難しさなどを背景に、5Gの十分な浸透には時間がかかりそうだ。次世代通信に関連した需要がいつ盛り上がるか不透明な中、部品各社はビヨンド5G(6G)を見据えた製品開発にも着手する。(阿部未沙子、新庄悠) 【写真】フジクラの5G用「60ギガヘルツミリ波無線通信モジュール」 フジクラは2025年度の市場投入を目指して、装置組み込み型の60ギガヘルツ(ギガは10億)ミリ波無線通信モジュールの開発を進めている。広帯域な60ギガヘルツは低遅延で大容量の映像が送れ、Wi―Fi(ワイファイ)のように免許不要で産業用途でも使いやすい。 例えば、工事現場の建機にカメラを取り付けて遠隔操作する際でも、映像のタイムラグをほとんど感じずに動かすことができる。こうした遠隔操作・監視に加え、5Gを地域限定で利用できる「ローカル5G」通信のバックホール(中継回線)などにも適している。 ローカル5Gの普及を見据えた提案をするのは日本無線(東京都中野区)だ。持ち運び可能で、基地局のような役割をする「可搬型ローカル5G―BOX」を日本市場に投入することを目指す。 従来、海外で販売してきた。ただ新規事業開発本部企画推進部の渡壁栄造専任部長は「試しに使いたいという顧客からの要求がある」といい、日本市場向けの試作品を開発した。防水仕様のため工事や災害の現場でも使える。 総務省が8月に発表した5Gの整備状況によると、23年度末において全国の5G人口カバー率は98・1%となり、25年度末の目標だった97%を前倒して達成したという。MM総研(東京都港区)の横田英明取締役副所長は「5Gや6Gを用いた自動化や遠隔操作へのニーズが出てくるのではないか」と話す。 次世代通信への期待が高まる中、将来の需要を積極的に取り込もうとする動きが各社で活発化している状況だ。 6Gの拡大を見据えて開発に取り組む企業もある。ヨコオと米澤物産(福井市)、導波技術研究所(長野県箕輪町)が共同で開発を進めるフレキシブル導波管コネクターという部品だ。競合製品と比べケーブルの柔軟性が高く、設置がしやすい。28年の発売を目指す。 6Gでは高い周波数帯の利用も検討されている。高い周波数帯は、例えば生産設備から発生するノイズの影響を受けたり、障害物に阻まれたりする性質を持つ。コネクターは工場や事務所内で、特定の対象物に電波を確実に届けるのに役立つ。 ただ次世代通信に関連した需要がいつ、どの程度盛り上がるのかが見通しにくく、発売時期が決められないという本音がメーカーからは漏れる。MM総研の横田氏は「通信のインフラ産業において、旗振り役が必要だ」とみる。官民連携の強化も需要創出のカギとなりそうだ。