中国メーカー初、「欧州の乗用車工場」が生産開始 奇瑞汽車がスペインの新興メーカーと合弁で
中国の国有中堅自動車メーカーの奇瑞汽車は、中国メーカーとして初めてヨーロッパで乗用車の現地生産を開始した。11月23日、同社とスペインの新興自動車メーカー「エブロEVモーターズ」の合弁工場で、現地生産の第1号車がラインオフした。 【写真】奇瑞汽車が現地生産を開始したスペイン・バルセロナの合弁工場 今回生産を始めたのは「エブロ」ブランドのSUV「S700」だ。「合弁会社のパートナー同士が一致協力し、スペインを代表する自動車ブランドにエブロを育てたい」。奇瑞汽車の董事長(会長に相当)を務める尹同躍氏は、第1号車のラインオフ式典でそう述べた。
(訳注:エブロS700は、奇瑞汽車のSUV「瑞虎7 PLUS」のブランドと車名を変えた姉妹モデルとされる) ■日産の旧工場を改修 奇瑞汽車は2024年4月、エブロEVモーターズと合弁契約を締結。総額4億ユーロ(約645億円)を投じて、EVの共同開発とバルセロナの既存工場の改修に取り組むことに合意した。この工場はもともと日本の日産自動車が保有していたが、2021年12月の閉鎖後に売却されていた。 上述の合弁契約の内容について、奇瑞汽車とエブロEVモーターズは出資比率などの詳細を公表していない。スペインの現地メディアの報道によれば、奇瑞汽車は合弁会社に40%出資しており、2025年に2万台以上を生産する計画だという。
合弁会社はS700に続いて、同じくエブロ・ブランドのSUV「S800」の生産をまもなく開始する。両車種はどちらもエンジン車とPHV (プラグインハイブリッド車)の2つのバージョンをそろえている。 現地生産の初期段階では、中国の奇瑞汽車の工場で両車種を半完成品まで組み立て、バルセロナ工場で最終仕上げを行う。2025年からは、すべての部品を中国から輸出してスペインで組み立てるCKD(コンプリートノックダウン)方式に移行する予定だ。
■EV生産は2025年に延期 バルセロナ工場では、エブロだけでなく奇瑞汽車の海外市場専用ブランド「Omoda」および「Jaecoo」のクルマも生産することになっている。だが現地メディアの報道によれば、奇瑞汽車は2024年10~12月期に計画していたOmodaブランドのEVの生産開始を2025年に延期した。 この計画変更は、欧州委員会(訳注:欧州連合[EU]の政策執行機関)が中国製EVに対する追加関税の適用を決定し、10月30日から実施に踏み切ったことが影響した可能性がある。中国政府は追加関税の代替案について欧州委員会との協議を続けているが、まだ合意に至っていない。
ドイツメディアの報道によれば、欧州議会国際貿易委員会の委員長を務めるベルント・ランゲ氏は11月22日、「EUと中国は合意に近づいており、中国メーカーは最低価格の順守を約束することでEVをヨーロッパに輸出できる」と発言した。 (財新記者:安麗敏) ※原文の配信は11月24日
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