なぜ村田諒太はTKO勝利の後に「リアルな相手と戦いたい」とサプライズ発言をしたのか?
本田明彦会長もGOサインを出した。 「村田は、もう自らのスタイルを確立した。次は大きい試合をやる。簡単ではないが、やれるまで待つ」 ゴロフキンは、来年2月にIBF世界同級王座の防衛戦があり、アルバレスはDAZNとの契約で来年5月に次戦を行うスケジュールが組まれている。 「東京五輪前」を条件にするなら、ゴロフキンがターゲットとして現実的だが、本田会長は、「いやカネロがミドル級に落としてくれるなら来年5月に彼が予定している試合をそれにする可能性だってあるよ。DAZNも含め、あらゆる関係者と話をしている」と明かした。 2020年東京五輪の年に日本のボクシング界の歴史は大きく動き始める。井上尚弥とも契約を結んだ、ボブ・アラム氏は、4月25日にラスベガスのMGMグランドで井上尚弥の王座統一戦をマッチメイクすることを明言。村田、井上という日本が誇る2人のスターが世界を股にかけて伝説を作ることになる。 ただ村田は、井上とは共演であり競演でないことを強調した。 「勘違いして欲しくない。尚弥とレースをする気はない。僕の哲学としてレースは必要ないんです。2万何千席のチケットが売り切れた。ドネアというレジェントとの試合を誰もが見たがった。それを提供するのがプロであり、尚弥が、その前例を作ったんです。でも比較は好きじゃない。子を持つ親として息子にそういう教育はしたくない」 村田らしい人生観である。 横浜アリーナを出た村田は、スポンサーへの挨拶回りを終え、都内で開かれた祝勝会へ顔を出した。時計の日付は回って「クリスマスイブ」になった。愛しい息子と娘は、もちろん、サンタクロースがプレゼントを持ってきてくれることをまだ信じている。村田は2人の子供がサンタさんへ書いた手紙を読んだという。翌日に学校があることが理由で、この日、試合会場にこれなかった息子に、次戦の観戦予定を約束できたことが一番のクリスマスプレゼントになったのかもしれない。 左目を大きく腫らした村田は、すっかり善きパパの顔となり、こう言った。 「来年34歳。ボクシング。もう長くはできないっす。だからリアルな相手と」 燃えるようにゴールへと突っ走る。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)